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1日の移動距離

「南を開拓しようとしているヤツがいる!」

 と俺は言った。

 クーラが、すうっと真剣な表情になった。

 マリは、ふふんと得意げな笑みをして、それからすぐに深刻な顔をした。


「マリ、なにか策は?」

「えっ? ええ」

 マリはそう言ってから、うーんと、わざとらしく首をひねった。


「おいこら、マリ。おまえ、ほんとは対応策を思いついてるだろ」

「えっ? 今なんて?」

「って、笑い声じゃねえか」

「そっ、そんなことないわよ。でも、エッチしながら考えたら良い策が思いつくかもしれないわ」

 マリは、にたあっと笑いながら言った。

 俺は思いっきりため息をついた。

 すると、クーラが(りん)とした声で言った。


「カミサマさん、急いでいるんでしょう? だったら、はやくマリとエッチを」

「はあ」

「ほら、笑ってないで」

「いや」

「もう、はやくしてくださいっ」

「あはは、今日は後ろからな気分だわ」

「いやいや、ふざけてる場合じゃないんだけど」

「いいえ、カミサマさん。ふざけているのは、あなたです」

「はあ」

 などと、俺たちが言い争っていたら、



「あー、あたしの股間から顔出して口ゲンカとか止めてくンない?」

 と、ミカンの声がヘソあたりからした。

 ちなみに言い忘れていたが。

 俺は今、仰向けになっていて、その上にミカンがおおいかぶさっている状態だ。


「ミカンごめんっ、というかさあ……。今ちょっと真剣な話してるから、ミカンもイジるの止めてよ」

「ああン?」

「いや、なんというか」

「なにがあ?」

「気持ちいいんだけど」

 下腹部が。


「あっ、あたしじゃないよ」

「じゃあ、イジってるのはワイズリエルか」

「それにヨウジョラエルもやってンよ」

 ミカンが大らかに言った。

 下のほうからクスクスと笑い声がした。


「いやいや、そんな他人事のように言わないで。ふたりを止めてよ」

「あっ、あたし?」

「そう」

「なんで、あたしがそんなことを」

 とミカンが言った。

 そして急に笑いだした。

 どうやら笑いのツボに入ったようで、ミカンは小刻みにふるえながらしばらく笑い続けた。

 と。

 その風圧に刺激され、俺はかるい恍惚(こうこつ)状態になった。


「って、カミサマいい加減にしろよなあ? あたしに向いてンだからさあ?」

「ごっ、ごめん」

「絶対に飛ばすンじゃねえぞ」

 そう言ってミカンが、がしっと握った。

 同時に、俺とミカンの口から名状しがたい叫びがもれた。

 下からワイズリエルの笑い声がした。

 そしてヨウジョラエルの不満そうな声がした。


「あはは」

 俺の表情を見て、マリが優越感に満ちた笑みをした。

「もうっ」

 クーラが可愛らしくため息をついた。

 俺は、うーんと唸ってベッドに沈み込んだ。――



挿絵(By みてみん)



「さ・て・と。じゃあ、カミサマ。先ほどの話に戻るんだけど良いかしら?」

 マリが俺の頬をさすりながら言った。

 俺が頷くと、マリは本題に入った。


「結論から言うけれど――。南部の創造は一番最後で大丈夫よ」

「ん? でも、南に行くって言っているぞ」

「あはは、まあこれをちょっと見なさいよ」


■――・――・――・――・――

中世ヨーロッパの1日の移動距離


歩行者:25~40km

商人等:30~45km

騎馬 :50~60km

河船 :100~150km

帆船 :120~200km


■――・――・――・――・――


「モンスターのいない旅ですらこの程度。焦ることないわよ」

「なるほど」


「ちなみに言うまでもないことだけれども、これはあくまでも目安よ。地形や天候によって移動距離は大きく変わってくるわ。だからこのデータは、徒歩よりも商人(荷物を載せた馬車)のほうがはやい――といった感じで、移動速度の比較に使う程度にとどめておくのが良いわね」

「って、船が一番速いのか」


「その通り。それに、あなたは騎兵を心配しているとは思うのだけれども、実践投入されるのは少なくとも数年かかると思うわよ」

「ああそうか。それなら早送りしなければまったく問題ない」

「ああ良かった。時間にかなり余裕がありますね」

 そう言って、クーラが安堵のため息をついた。

 下の方からも三人の穏やかな笑みがした。



「ちなみに陸の旅人の平均的な移動距離は、1日30km。馬で旅したとしても10日で300km、徒歩とほぼ同じよ。これは4~6日毎に1日、馬に休息日を与えないといけないからよ」

「なるほど」

 だとすれば、警戒すべきは川なのか。


「で、そのうちの南ルートをマリはブロックする自信があるんだな?」

 と俺は訊いた。

 すると。

「ええ。すこし許してしまうけれど。でも、そこで止まるわよ」

 とマリは言った。

 そして、にたあっと笑った。


 それはなんというか、ひどく根性の悪いゲスな笑みだった。

 が。俺はマリのそんな笑顔に失笑しながらも、しかし、絶大なる信頼を寄せるのだった。――



――・――・――・――・――・――・――

■神になって知り得た事実■


 中世ヨーロッパの1日の移動距離を知った。



 ……帆船が陸路の5倍以上の早さだった。



今回から試験的にフォーマットを変更して投稿します。

第5幕ラスト(1月末)まで、調べながら不定期に更新していきますのでどうぞよろしくお願いします。


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