第15話 岐阜での捕獲
三木のメッセージが届いたのは、島根から戻って3日後だった。
「残りの進捗を整理しました。確認をお願いします」
リストを開くと、6か所の地名と推定個体数、直近の目撃記録の日付が並んでいた。
三木が作る資料はいつもそういう形だ。
「岐阜が最短でアクセスできます。推定個体数4から7体。霧域の規模は九州より小さい」
「岐阜から始めます」
「了解しました。朝倉さんに共有します」
◇
岐阜へは名古屋経由で向かった。
新幹線の中で、朝倉が缶コーヒーを俺の前に置いた。
「買ってきました」
「ありがとうございます」
「ブラックでよかったですか」
「はい」
「聞けばよかったですね、最初から」
窓の外に、田んぼが広がっていた。
晴れている。朝倉はしばらくスマホを開いていた。
「島根の後、槙野さんとのこと——聞いていいですか」
「断りました。今の形が動いているので」
「それだけですか」
「それだけです」
朝倉がスマホから目を上げた。
何かを言いかけて、やめた。
「分かりました」
名古屋を過ぎたころから、外が山になった。
◇
《双霧洞》は、岐阜市内から外れた丘陵地帯にある。
朝倉と2人で入った。神崎チームは呼んでいない。
「前回と同じ構成ですか」
「霧域が2か所あるという記録があります。九州のように完全に独立しているかどうかは不明です」
8層に入ったところで、それが見えた。
通路の両端に、白い霧の塊があった。左右でほぼ同じ大きさ。
中央の細い通路部分だけが霧から外れている。岩肌に変色があった。
「連結しています」
「対応できますか」
「試します」
俺は通路の中央に立ち、左右の霧を視野に収めた。2つある。繋がっている。
【環境を検知しています——】
【対象周辺に気体環境(腐食性)×2を確認】
【連結した霧域を含めて収納しますか?】
「入ります」
了承する。
左右の霧が、同時に消えた。
壁の変色だけが残った。通路が、急に広く見える。
「……2か所、同時に」
内部を確認した。
【腐霧種 ×6】
【収納時の状態:群れ単位で停止中(生存確認)】
【腐食性霧域 ×2:停止中】
【過時間:0秒(内部停止)】
「6体です」
朝倉が少し間を置いてから、スマホを開いた。
◇
地上に出て、三木に連絡した。
「6体、収納しています。霧域が2か所連結していましたが、一括で対応できました」
「了解しました。連結した霧域への対応、初例として記録します」
「岸本さんから何かありましたか」
「それで連絡しようとしていました。転送します」
届いたメッセージを開いた。岸本からだった。
「今後の依頼を、都度の案件ごとではなく、継続的な枠組みとして整理したい」
そのまま朝倉に転送した。返信はすぐ来た。
「こちらで整理します。岸本さんとの調整は私が入ります。倉橋くんの条件は今のままで進めます」
「はい」
「分かりました」
それで終わった。
◇
帰りの電車の中で、三木からもう1件入った。
「残り5か所ですが、1か所だけ状況が異なります」
「どう違いますか」
「ダンジョン内ではありません。廃工場跡の地下に、腐霧種と同種と見られる個体群が自然発生しています。ダンジョン庁の管轄範囲外になるため、どこが所管するかで調整中です」
俺はしばらく画面を見ていた。
「所管が決まったら教えてください」
「了解しました」
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