大木と受付嬢
ダンジョンの外に出ると、大木が横たわっている。
受付嬢が、腰に手を当てて怒った顔をしていた。
「ちょっと、何よこれ!」
そうですよね。ギルドの半分くらいが大木で埋まって邪魔ですよね。
「土産。やるよ」
受付嬢が眉根を上げる。
「買取品目外となりますので、お引き取りください」
そうだよね、木は国の指定する品目になかったよね。いや、葉っぱがあったっけ?
「ダンカリで売ったら金になるんじゃないか?葉っぱは一山大したことのない金額だが、これだけの太さがある丸太なら」
受付嬢がスマホをポケットから取り出して検索を始めた。
「お、直径50センチある丸太だと、10センチでも5千円で売ってる。え?じゃあ、これ、何メートルあるの?直径も50センチよりあるよね?この木1本で結構な値段で売れるってこと?」
受付嬢が嬉しそうだ。
でも、どうやって運んでどうやって切って出品するんだろう?
ギルドが半分埋まっているからここにずっと置くわけにもいかないだろうし……。
「ちょっと、何よ、その顔」
受付嬢が私をにらんできた。
「あー、いえ、その、これ、とっても役に立ちました!ありがとうございます!」
残念な子を見る目になってたかと反省。バカにするつもりはなかったんだよ。と、心の中で言い訳をしながら水切りゴムワイパーを差し出す。
「は?こんなものが役に立ったなんて、嫌味?」
志崎さんが受付嬢の言葉にため息をついた。
「本当だ。俺が保証する」
志崎さんの言葉に、受付嬢が疑いのまなざしを私に向けた。
「ふぅーん、で?1時間で役に立つ武器を手にして、どれだけレベルが上がったの?」
「あ、まだ確認してませんでした」
えーっと、ステータスと心の中で唱えて……。
「レベル開示」
これで見えるはず。
「へー、もうレベル7なのか、すごいなぁ」
志崎さんがレベルを見て感心したように頷いた。
「え?うそ、本当だ、レベル7もあるっ!」
最後に確認したのはいつだったかな?レベル4だったはずだ。
「あんた……」
私の言葉に受付嬢が振り返った。
「寄生虫め!利用したわね、レベル上げに……」
きつい顔でにらまれ両肩をつかまれた。
指先が肩に食い込み痛みを感じる。すごい力だ。
「こら、ミサ手を放せ!」
受付嬢はミサという名前なんだ。っていうか、受付嬢を名前で呼ぶんだね。いや、私も有希って呼ばれてるから、志崎さんは分け隔てなく名前で呼ぶ人ってことかな?
そういえばなんかで聞いたことがある。探索者はダンジョンの中で敬称をつけて呼びあわないとかなんとか。
志崎さんがミサさんの手をつかみ上げた。
「だって!お兄ちゃんを利用するなんて許せない!」
お兄ちゃん?
「どうやって取り入ったのか知らないけれど、お兄ちゃんはあんたみたいなずるい奴らに利用なんてさせないんだからっ!」
「ミサ、いい加減にしろっ!」
ミサさんが志崎さんの手を振り払って再び私をにらみつける。
「すまない、不快な思いをさせて……」
志崎さんが謝罪の言葉を口にすると、私の腕をとった。
「行こう」
静かに、志崎さんの手を腕から外す。
「志崎さんは間違っています」
志崎さんが私の肩を持ったことを悲しそうな目で見ている。
「ちょっと、お兄ちゃんの何が間違っているっていうの?さんざん利用して、悪口言うなんてっ」
ミサさんがまた目を吊り上げた。
いつもご覧くださりありがとうございます。
皆様の感想のおかげで、無事に、受付嬢がこじらせ妹へと変貌いたしましたー!パチパチパチパチ!
急に気温が上がったので、熱中症にはお気を付けください。
まだ、5月なのに真夏日……真夏……ってなんだろうなぁ……




