装備は完璧!
「いくらつなぎのは防水加工とはいえ、通常の1階層に出てくるスライムの酸とは比べ物にならないくらい強いぞ?むしろどつき兎のほうが安全だ!」
……5倍強い酸。これは、あれを試すのにもちょうどいいのかも。
「無理なら撤退します!」
ということで。
「【クレイコーティング】」
呪文一つで、想像したように、靴とひざ下に泥コーティング。ちゃんと乾燥してカチカチ。想像力のおかげなのか、ぽろぽろ落ちてこない。
「なんだ?」
志崎さんが驚いている。
「あ、私土魔法属性なんです」
そうだ。念のため、水切りゴムワイパーもコーティングしておこう。
「【クレイコーティング】」
持ち手まではしない。下から50センチくらいまでの高さをパック。
……ちょっと重たくなったけれど、許容範囲。
「その魔法は、何の意味があるんだ?」
志崎さんが首を傾げた。
「土なら布よりも酸で溶けるのに時間がかかるから、ちょっと安全かなと思って」
志崎さんがちょっと考えこむ。
「スライムはどの辺に出るんですか?それも他のダンジョンと同じですか?」
「地図だ」
志崎さんが、ポケットからスマホを取り出した。
「スマホっ!落としたら1分でダンジョンに食べられちゃいますよっ」
そう教えてくれたのは志崎さんなのに!
「あはは、ほら、大丈夫。それにこれはスマホじゃなくて、探索者用の電子辞書。地図、魔物の特徴などが入ってるだけのやつで、食われてもまた買えば済む」
そんな便利なものが!
「これも開発中の物だ」
手に入らないのか。
「ほとんどの人間は同じダンジョンにしか行かないし、事前に調べるだろう?その情報は紙に4、5枚程度で足りるからな。需要がないんだ」
「じゃあ、開発中とはいえ、発売されないかもしれないということですか?」
志崎さんが苦笑する。
「あ、でも、ダンカリ取引記録とかも入ってたら買う人がいるかもしれないですね!何がどれだけの値段で売れるかとか分かると……」
志崎さんが私の肩をつかんだ。
「それだ!会社に伝える。っと、スライムはあっちだな」
肩をつかみながらスマホ改め、探索者用電子辞書をチェックして志崎さんが右斜め前を指さした。
てらてらと明かりを受けながらスライムが輝いている。まるで池のようにも見える。
「うっわぁ……」
隙間なくスライムがいるってことだよね……。あ、よく見ればたくさんの核が見える。
「来る者が少ない上に、スライムで経験値稼ぎをしようという者がいないからな、増えてるな……」
「あの、魔石の買取り価格も5倍なんですか?」
なら、来る人もいそうだけど。
「普通のスライムと同じだ」
「それはよかった」
ほっと息を吐き出す。
「何がいいんだ?5倍強い魔物を倒しても、得られる魔石は弱いのと同じだぞ?だからここは不人気なんだけどな」
「個人的に、倒した後魔石を取らないと勿体ないって思わなくていいから、よかったと思って。1個500円の魔石なら10個で5000円、50個で25000円でしょ?さすがにもったいないって思うじゃないですかっ!」
はははと志崎さんが笑った。
「さすがにそんなにスライムは倒せないと思うぞ?経験値を貯めるだけなら、核を壊せばいい。一番手っ取り早いのは踏むことだが、ここでは酸が強くて踏みつぶすこともできないからな。長い棒で酸がかからないように核をつぶしていくとなると……」
志崎さんが若干、何も知らない後輩探索者に厳しい現実を教えてがっかりさせちゃうなという顔をした。
「ふふふ、大丈夫です。私には、武器がありますから!」
スライム生息地につくと、水切りゴムワイパーを構えた。
いざ。
装備:ツナギ 泥まみれ
武器:水切りゴムワイパー
……(*´▽`*)あれ?どこが完璧なのかな?w




