遭遇
……それに、無理させちゃうってなんだろう?
私「無理ですぅ!」って逃げ出しちゃったりしない?
う、うん。「無理ですぅ!」って迷惑かけちゃう可能性も考えて……。
お礼の品兼、お詫びの品を用意して行こう。何がいいかな……?
そうだ、もう月曜までダンジョンに行くつもりはないから、買い物行こう。
『よろしくお願いします』
と、返事を返す。
『じゃあ、待ち合わせは舞浜駅ね』
舞浜駅?
『東京Dランドのある?』
『そう。朝9時集合で!』
『OKです(スタンプ)』
「あ!まずい、会社に遅れちゃう」
慌てて家を出る。
会社に行っても、書き込みを思い出して心臓がバクバクする。
しばらく一人ではダンジョンに行かない方がいいって言われても……。
今度の月曜は雷電さんが一緒に行ってくれるとしても、そのあとは?週に8時間はダンジョンに行く義務があるのに。
いつも誰かについてきてもらうなんてできないよね。
困ったなぁ。
「有希」
声をかけられて驚いて顔を上げる。
「お前、なんでこんなところにいるんだよ!」
こんなところ?
周りを見渡すと、家の最寄り駅じゃない。
「まさか、まだ何か俺から盗んでいくつもりか?結婚詐欺だって玲亜を脅したようだけどな」
考え事をしながらだったから、癖で淳史と暮らしていたマンションに向かう電車に乗ってしまったんだ。
「忘れたんじゃねぇよな、お前が今住んでるアパートの敷金礼金と1か月分の家賃、それに引っ越し費用はこっちが払ったんだ。お前がその気なら請求してもいいんだぞ」
淳史が、私を怒鳴りつけた。
「それに、また脅したって、何一つお前に渡さないからな!」
駅の改札を出た通路で声を荒げる淳史に、通行人がなんだなんだと視線を向ける。
「違う、そんなつもりじゃ……」
もう、二度とかかわる気はないと思っていたのに。
「なんだ?それじゃあ、俺に未練があって会いに来たってことか?」
にやにやと淳史が笑っている。
「ち、違う……」
「お前さぁ、俺にぞっこんだったろ?やっすいプレゼントにも目をキラキラさせてありがとうって喜んでさぁ」
「ち……」
違う、違う、違う……。
「あれは……」
もらったものが嬉しかったんじゃない。
安いとか高いとかじゃなくて、誕生日を覚えていてくれたことが嬉しかった。
「白状すると、いつもお前の誕生日とか忘れててさ、玲亜に言われて思い出して慌てて会社帰りに買ってたんだよ」
バリンと頭の中で何かが割れる音がした。
最後のかけらまで踏みにじられて粉砕された気持ちだ。
覚えられてすらいなかった……。
真っ青に青ざめて震えているであろう私を見て、淳史が愉快だと言わんばかりに笑顔を向ける。
「何あれ、修羅場?」
「別れ話?」
私と淳史の様子を見て好き勝手に噂して通り過ぎていく人たち。
「有希っ」
そんな私の名前を呼んで手をつかむ人がいた。
「あ……」
振り返ると、サングラスをかけた志崎さんがいた。夜なのにサングラスをかけているなんてちょっと怪しくもある。
「誰だ、お前」
淳史が志崎さんにすごんだ。
「俺のこと、知らない?結構有名な探索者なんだけど」
志崎さんがサングラスをちょいとずらして淳史に顔を見せた。
「しらねぇな。探索者なんて負け犬の集まりじゃねぇか!結婚できない、子供がいないやつらのゴミ捨て場だろ?」
バカにしたような言葉。
ざまぁしましょう、ざまぁをね。(まだ先です、スイマセン)




