スライムはまだ早い
十数人の人がスライムを倒そうと何らかの武器を持っている。
棒だったり箒だったり、ゴルフクラブだったり。
服装はジャージに運動靴が多い。
一方私はジーパンに春ニット。靴はかかとのないショートブーツ。さすがに普段着すぎかもしれない。
「今日はやめておこう」
スマホを取り出して見る。
電波は届かないけれど動かないわけではない。
「おー、お前新人かぁ?スマホは持ち込まない方がいいぞ。ギルド……えーっと、ダンジョン管理事務所にロッカーがあるだろ?荷物は預けるんだ」
ぬっとスマホを覗き込む顔があらわれた。
「ひゅえ?」
後ろから突然スマホを覗き込まれて驚いてポロリと落としてしまう。
「うわー、早く、早く拾え。スマホだろうがなんだろうがダンジョンが容赦なく食っちまうぞ!」
食う?あ、消えちゃうってこと?
慌てて拾う。スマホが消えちゃったら大変だ。
焦っりすぎて拾ったスマホをまたすぐにポロリとまた落としてしまった。
「あー、バカ、1m先じゃ、急げっマジでやばいって!」
ぱっと動いて長い手を伸ばしてスマホを拾って私の手に戻してくれた。
「あ、ありがとうございます」
顔を上げると無精ひげで、丸いレンズのサングラスをかけたひょろりと背の高い男性の顔があった。
「いや。いいか、とにかくなくして困るものは絶対持ってくるなよ!彼氏からもらったペンダントとかもだ」
「元彼からもらったペンダントなら持ってきて投げ捨てます」
くくっと男の人が笑った。
「跡形もなくなるからおすすめだと言いたいところだが、ゴミ箱じゃないから、質屋にでも売って金にした方がいい。じゃあな!新人!」
ポンポンと頭を叩いて男の人はそのまままっすぐ奥へと進んでいった。
地図を見ると、2階層への階段があると書いてある。
「ゲームみたいに、行ったことのある階層へとワープ?転移?できないのかな?1階から順番に進みなおすの?」
大変だなぁ。食料とか全部持って行かなくちゃならないってこと?それとも現地調達できるのかな?
山本さんから食べられるものの情報は聞かなかったけどな。
っていうか、結婚するはずで、ダンジョンに来るつもりなんて全然なかったから下調べしてなさすぎるよね!
有休は明日まである。いったん帰っていろいろ調べて準備しよう。
ダンジョンの入り口に向かって歩く。
「ねぇ、君、新しい子だよね?こっちおいでよ」
お見合い場所から声がかかる。
その場にいる人たちは、普段着の人もいるけれど、おしゃれしている人が多い。
とてもダンジョンで魔物を倒す服装はしていない。
「いえ、もう帰るので」
ぺこりとお辞儀をして足早にダンジョンを出た。




