魔石の横取り?
3階層に降りると2階層のじめっとした空気とはちがい、今度はものすごく乾燥している。
草原というよりも、荒野だ。
岩と土。サボテンのような植物に、低木。
人の数は、中学生が体育館で部活動をしているくらいの密度だろうか。イモ洗いというほどの密度はないけれど、それなりに人がいる。
かなり奥まで壁が見えないので広さは2階層よりもありそう。
ここに、スライム、かみつき蛇、吹き出しスライム、どつき兎、蹴り兎、角兎が出るんだよね。
視界を遮る木や草がほとんどないから、これなら警戒しながら移動すれば大丈夫そうだ。
探索者は、見晴らしの良い場所に立ち、魔物の姿を見たらすぐに近づき倒している。
岩陰の裏に回ると、岩にもたれて休んでいる人の姿があったり、岩を削って袋に詰めている人の姿がある。
んー、どうしようかな。
とりあえず壁沿いに進んで、20分ほど歩く。奥に行くと、入り口付近ほど人はいない。
「あー、そっちはやめといたほうがいいぞ、吹き出しスライムが砂の中に隠れてる」
「え?」
50過ぎの探索者に声をかけられた。
「対策をしていないと、うっかり踏んでひどい目にあうぞ?長靴くらいじゃだめだ。吹き出した酸は30センチくらいしか届かないと言われてるが、足が砂に沈んで、膝上まで酸が届くぞ」
うわっ、そうなんだ。知らなかった。
「ありがとうございます。対策しながら、行きます」
「対策?今から?」
探索者は首をかしげながら、角兎を見つけて走っていった。
「【クレイコーティング】」
ズボンは念のため太ももまでコーティング。
対策その1終わり。
次。
「【ぽこっ】【ポンポン】【ぽこっ】【ポンポン】【ぽこっ】【ポンポン】【ぽこっ】【ポンポン】」
足を出す場所に土魔法をかけながら進む。
光る、光る。
どれだけ砂の中に吹き出しスライムが隠れていたのか。
「ひぎゃっ!」
左右から酸液が飛んできて長靴にあたる。クレイコーティングしてあるので、長靴までは到達せず。
ずんずんと進んで行き、人気のない壁沿いに到着。
「吹き出しスライムがネックになっていてあまりここには人が来ていないのかな?」
私の目的は光る泥団子だ。
えーっと、まずは……。
「3mの穴を、5個。6個目は階段つけて降りる用。下りたら階段作ったところも消し去って、完成」
30センチで、深さはどうする?……今日はもう少し深く掘ってみようかな?えーっと、30回で、9メートル、3mと合わせて12メートル。よし、そこまで掘ってみよう」
「【ぽこっ】【ぽこっ】【ぽこっ】【ぽこっ】【ぽこっ】【ぽこっ】【ぽこっ】【ぽこっ】……」
これ、掘るところが見えてないと掘れないかと思ってたら、穴の下に穴って想像すると掘れるんだよね。
ひもでつないでいれば持っている判定されるみたいなのと同じなのかなーって。
魔法がひも代わりにつながっているみたいな?
29、30と。
「うわー、すごい、土の色が赤い!」
真っ赤じゃないよ。赤土だ。
いままでの茶色と横に並べると、色の違いがはっきりする。
これなら、今までよりもきれいな光る泥団子ができるかもしれない。
「【光る泥団子(強)】」
赤土の光る泥団子ができた。
……できたけど……。
「【光る泥団子(強)】」
茶色い土で作って横に並べる。
「……こうして並べれば赤さが際立つけど……。レンガ色と言えばいい?赤土で作ったものも味気ないなぁ……」
そうだ!
「土を混ぜてみる?」
マーブル模様や、線模様。
インテリア用に丸く石を切り出したものは、石の模様が付いていておしゃれさを際立っていた。
あんな感じにちょっと模様が付いたらいいな。
と、イメージしながら。
「【光る泥団子(強)」
目の前には、赤土と黒茶の土と波打つような模様になった光る泥団子が出来上がっていた。
「って、光った、魔石、魔石!」
目の端で光が立ち上っているのが見えた。
魔石を拾う。
「え?3つもある」
吹き出しスライムが重なって落ちてきた感じなのかな?
と、思ったらぼとぼとと吹き出しスライムが落ちてきた。
なんでこんなに大量に?と思って見上げると、運動場の土を均すときに使うトンボの先がぬっとあらわれた。
それから人の顔がのぞく。
「あった、見つけた!」
何を見つけたって?
30くらいの茶髪の男が3mの高さから飛び降り、私を手で押しのけた。
「おら、てめー、俺の魔石盗んでんじゃねぇよ!」
さっき落ちて光となった吹き出しスライムの魔石を、男が慌てて拾う。
「あなたの、魔石?」




