魔法の話
「魔法系のスキルがないと使えなくて、スキル持ちは50人に1人くらい。その中で訓練して魔法が使えるようになるのが2人に1人」
魔法が使える人は100人に1人くらいしかいないのかぁ……。
「魔法が使えるようになっても、魔物を倒せるような魔法が使えるのはさらに少ないの。300人に1人くらいかな」
「へー、じゃあ、山本さんはその300人に1人のエリートですね!」
山本さんが照れたように笑った。
「ありがとう。でも、佐藤さんも使えるかもしれないわよ。ステータスを確認してみて。心で念じればいいわ」
名前:佐藤有希
年齢:35
レベル:1
HP:35/35
MP:268/268
スキル:土魔法
「あ、スキルに土魔法ってあります!」
山本さんが微妙な顔をした。
「えーっと、魔法系スキルおめでとう。ダンジョンの中に限るけれど訓練次第で魔法が使えるようになるわよ。レベルが上がるとHPやMPが増えるわ。これもダンジョンの中だけの恩恵ね」
「MPは魔法関係ですよね?だからダンジョンの中だけの恩恵ってわかるんですけどHPは?ダンジョンの中と外で違うんですか?」
山本さんが今までで一番大きく頷いた。
「そう。たぶん身体強化に近いんじゃないかって言われてるんだけど、レベルが上がると体力も力もぐんっと上がるんだけどね、ダンジョンの外に出るとレベル1の状態に戻っちゃうのよ。そうね、例えば1キロも走れないのにダンジョンでレベル2になると10キロくらい走れるようになる。ダンジョンの外ではやっぱり1キロも走れない」
なるほど、悪者がダンジョンでレベル上げて力持ちになってダンジョンの外で犯罪に使ったら怖いもんね。そんなことは起きないってことか。うまいことできているものだ。
「……だからね、私も実はダンジョンの中にいたほうが体が楽なのよ。レベル24あるから。体力もあるし……。ダンジョンの中で産みたいくらいよ。でもね、やっぱり病院の一つもないと怖くてダンジョンの中じゃ産めないわよね」
山本さんがにこりと笑う。
入り口に戻ってきた。
「はい。案内は終わり。好きなように過ごしてね」
好きなようにと言われても、困ってしまう。
「おすすめは?」
山本さんがんーと考える。
「そうね、しばらくはゆっくりしていればいいと思うけれど、結婚して子供を産むつもりがないなら、無扶養者動員法で魔石の納品義務が課せられるようになる前に、レベルを少しは上げておいた方がいいと思うわ。だいたい3階層で危険なく過ごせるのがレベル10」
この先どう生きていくか、か……。
「じゃ、頑張ってね。質問があればいつでも聞いて。いなければ受付で聞けば教えてもらえるから」
手を振って山本さんは別の人の案内するために去っていった。
手元に残された地図に改めて視線を落とす。
「レベル上げ……かぁ……」
人生どうなるか分からない。
ダンジョンに行きたくないから淳史と結婚しようとしたんでしょって玲亜の言葉が頭に響く。
違う。
違うと今ははっきり言える。でも……。
「ダンジョンには行きたくないって心を持ったまま結婚して子供を産んで……」
何か不幸な出来事があったとき、思うようにいかなくなった時に「本当は結婚したくなかった、子供なんて欲しなかった、仕方なく産んだんだ」と思ってしまうことが絶対ないなんて言えるだろうか?
ダンジョンは楽しかった、ずっと探索者を続けたかったけど、それよりも愛する人ができたから結婚した。子供と過ごしたいから探索者を辞めたと、そう言える方がずっといい気がする。
「ダンジョンから逃げたいって気持ちで過ごしちゃダメな気がする。少しでもレベルを上げよう」
と、地図を見ながらスライム狩りをする場所へと向かった。




