つながり
「あ……いや、ごめん、えーっと、その、もしかして、俺、嫌われてる?」
志崎さんがちょっと自信なさげに声のトーンを抑える。
「いえ、別に、嫌いでは……あ、好きって意味でもなくて、その、普通?」
「普通……」
志崎さんがぼそりとつぶやく。
「えーっと、すいません、あー、見ず知らずのかかわりがない人よりはいい人だなぁと好感を持っている?」
と、言い直す。
「嫌われてない?じゃあ、どうして連絡をくれないんだ?」
「あ、志崎にも連絡してないんだ。私も連絡待ってたんだけどなー」
「ごめんなさい、あの」
すっかり忘れてましたっていうのも失礼か?
「ご、ご迷惑かなと……その、少しお話をして名刺を下さっただけなのに、図々しく連絡するのも……」
少しはそう思っていたのも本当。
抜け駆けするなとか熱心なファンがいるくらい、すごい人なんだろうし。
雷電さんがにこにこと笑った。
「あっはー、いいじゃんいいじゃん。そういうの大好き。ほら、スマホ出して、連絡先交換しよー!」
雷電さんに肩をバンバンとたたかれた。
「え、あの」
戸惑いながらスマホを取り出し、メッセージアプリを立ち上げる。
「ウチさぁ、探索者で結構名が売れてるじゃん?だからなんか変ややつが寄ってくるんだよねー。おこぼれにあやかろうみたいなやつ?」
「すいません、全然存じ上げなくて……」
「あはは、だから、そこが気に入ったの。特別な目で見てこないし、志崎も有希のそういうとこ、気に入ったんでしょ?」
気に入った?
志崎さんが私を見た。
「ん、まぁ、気に入ったというか、探索者は横のつながりも大事だから、できれば情報交換できたらと思っているんだが……」
「女に連絡先教えれば、好きですー攻撃をくらい、男に連絡先教えれば、何々頼むとか要求ばかりだっけか?もうけてるんだろ金かしてくれとか」
「はぁ、大変なんですね」
有名税っていうのかな。
「てなわけで、ランカーってこと気にせずに接してくれる人は貴重なんだよ、連絡先登録してくれるか?」
と、志崎さんもスマホを取り出した。
「……情報って、ネットで探すことはできないんですか?」
連絡先を交換しつつ尋ねる。
「んー、ああ、まぁ探索者協会公式サイトなら、偽情報は排除されるけれどな、それ以外だと本当か嘘か分からないような怪しい情報もあふれているから気を付けた方がいい」
「あとさ、やっぱ表には出てこない情報ってのも探索者とつながれば教えてもらえる」
表に出てこない?それって、みんなに教えたくないとかなのかな?
「えーっと、高級な薬草が生えている秘密の場所とかですか?」
雷電さんが笑った。
「あははは、そんな情報があれば確かに教えてほしい。そうじゃなくて、あいつはナンパ野郎だから近づくなとか、ランクを鼻にかけたうんこだとか」
志崎さんが雷電さんの顔を見た。
「え?俺にはそんな情報流れてこないけど、もしかして、俺もいろいろ言われてる?」
「あははははっ、志崎、ナンパしてんの?」
「いや、してないが」
「知ってるって。逆にナンパもしてないのに、ちょっと声かけただけで勘違いした女に言い寄られて大変な目にあってんだろ?それなのに人助けせずにはいられないって、損な性分だなーって哀れまれてるぞ」
「大変ですねぇ……」
しんみりと声を出す。
「で、志崎には何の情報が流れてくるのさ」
「そりゃ、今日のダンジョン情報だよ。どんな魔物が出たとか、数はどうだったかとか、何がドロップしたって話もあるな。それがいくらになったかなんて、表に出すと俺も俺もと行くやつがいたら大変だから裏でしか流れないな」
志崎さんの話を雷電さんが細くする。
「金に目がくらんで無理する奴が出るからって話。ウチらくらいになれば、どれくらいのレベルがあればどこまでやっても大丈夫って自己分析もできてるし、ちょっと相談すりゃ「お前にゃ無理だ」とか「一緒に行こうぜ」とかいう話になるんだけどね」
「えーっと、そんな人たちのつながりに、初心者の私が混ぜてもらってもいいんですか?」
ちょっと心配になる。




