怒涛の週末
土曜日。
リサイクルショップの人に来てもらった。
「これもいいんですか?」
一人暮らしには大きなテレビ。いらない。
一人暮らしには大きな冷蔵庫。いらない。そのうち小さなものを買おう。
一人暮らしには大きな洗濯機。いらない。しばらくはコインランドリーでいいや。
一人暮らしには大きな炊飯器。いらない。土鍋で米を炊くかパックご飯でいい。
多機能電子レンジ。気にいっていたけれど、いらない。凝った料理なんて作らない。安いのを買おう。
象型掃除機。いらない。スティック型に買い替えよう。
淳史からもらった安物のアクセサリー。
「あー、これは値段がつけられないですね」
でしょうね。
「処分しておきましょうか?」
「お願いします」
物のように、簡単に記憶も処分できたらいいのに。
日曜日。
不動産屋に足を運ぶ。
合鍵を持たれていたことも嫌だけれど、それは鍵を付け替えてもらえばいい。
場所を知られているのがいやだ。
もう二度とかかわりたくない。
だから、引っ越そう。
今住んでいるところは、会社にもダンジョンにも近くて便利だけれど……。
「あー、あんまりこの辺りはおすすめできませんよ。ダンジョンが近くてね」
スタンピードが起きる心配はこの10年で少なくなってきたと思うんだけど、まだ心配されてるのかな?絶対にないわけじゃないもんね。
「ダンジョンに行く人がここ数日で増えてね、あまり素行のよくない人がうろついてるみたいで」
……なるほど、別の理由か。確かに、いつもよるコンビニとか客が多いなと思っていたけれど。
「同じ理由でダンジョンの最寄り駅近くも、大家さんたちが頭抱えてますよ。引っ越しを急いでないなら、この辺りなら値段が下がるんじゃないかな……。急ぎなら、おすすめはこの辺り、希望の値段より少し上がるけどね」
うーん。どうしたものか。
家電品売りに売って、家の中はスカスカ。必要な物はまた買わないといけないからお金がいる。
正直引っ越し代金も厳しい。
共同貯金にお金出したから、貯金も心もとない。
引っ越しは少し待って、鍵だけ付け替えてあの部屋にいる?
玲亜に荒らされた部屋を思い出す。
いや。引っ越したい。……ん、待てよ、引っ越すと、またガス水道電気などもろもろの届け出だとか住所変更だとか……会社にもあれしてこれして……。
気が重い……。
「だけど、探索者が稼げるなんて1部の人間だけでしょう?またさーっと波が引いてもとに戻るかもしれませんしねぇ。不動産価格もどうなるか……」
不動産屋さんの言う通りだ。
まだ全然状況は分からない。3か月や半年で状況がどう変わるかわかんないんだよね。
「あの、少し考えます。ありがとうございました」
不動産屋を後にする。
探索者として、設けられる可能性って、私にもあるんだよね?
ランキングに乗るように目指すとかじゃなくて、『ダンカリ』でダンジョンの物を売る方向で。
値段が落ち着いたら、だいたいどれくらいの収入が見込めるかわかってくると思うし。
アパートに戻り、部屋の模様替えにいそしむ。
「あと、半年ほどはここで我慢……そして、いっそのこと探索者としてめちゃくちゃもうけて、淳史や玲亜がうらやましがるくらいいい部屋に引っ越してやる!……っていうのもいいかもね。……ま、もう二度と連絡とるつもりはないけど」
月曜日。
親会社に出向すると、会議室入り口で紙を渡された。
「これに記入して、あちらの奥でダンジョン産の品物を提出してください。提出物がないときは今度からこちらに顔を出す必要はありません。月に一度、第一月曜日以外はダンジョンに直接行っていただいてかまいませんので」
ほ?そうなの?
「それから、連絡はこちらからいたしますのでQRコードを読み込んで登録してください」
と、もう一枚紙を渡された。
そっか、月に1回来るだけでいいんだ。
「よかった、ここと会社の中間地点に引っ越さなくて……」
慌てて決めなくてよかったよ。週に1回なら近いところが便利だけど、月に1回ならそこまで近いところに住むメリットなんてないもんね。
「引っ越し?まさか、結婚して新居に引っ越すとか?」
うん?
振り返ると、志崎さんがいた。
「志崎、あんたね、冗談でも言っていいことと悪いことがあるっ!」
雷電さんが志崎さんの頭を小突いた。




