泥棒
★視点もどる
「また、やっちゃった……」
魔力切れでマキちゃんに運んでもうのも2回目。
前回と違い、医務室にはかなりの人がいて、臨時ベッドも増えていた。
「痛てぇ~よ!ポーションとかないのかよ!」
「ダンジョン甘く見てたわ、やっぱ探索者なんて無理」
「もぉ、和君しっかりしてよぉ。一緒に稼ごうって言ったじゃない!」
「ちょっと油断しただけだ。次は大丈夫だ」
「3階層の石と草ととってきたぞ。いくらになるかな……痛ててて、足を噛まれたくらい安いもんだよな」
医務室の人がげっそりした顔をしている。
「ありがとうございました」
とお礼を言って家路につく。
「あー、マキちゃんにはお詫び……いやお礼?をしないと!……また、会えるかな?会えたら……何がいいかなぁ」
マキちゃんに似合いそうな真っ赤なルージュ?……いやいや、化粧品は好きなブランドとかいろいろあるだろうから逆に気を使わせてしまうかも。
だめにしちゃったキャンプ用品?
駄目だ。しばらくダンジョンでのんびりなんてできそうにないもんね。
1階層の様子を思い出す。
殺伐としていて怖かった。
2階層はそこまでではなかったけれど、マキちゃんとかみつき蛇を倒している間にも、次々初めて2階層に来たという人が増えていった。
もしかしたら来週には2階層も似たようなことになっているかも。
とすると、マキちゃんが言うように3階層に早く上がった方がいいのかも。
あとどれくらい倒したらレベルが上がるんだろう。というか3階層ってレベルがいくつ以上っていうルールあるのかな?3かな?10あれば安全に過ごせるっていうからもう少し上?安全ってどのレベルでなのかな。
うーん。調べないと。
そうだ。ほかにも何か調べようと思ってたのに、結局いろいろ忘れてるよ。
何だったかな……。
あ、そうそう、志崎さんと雷電さんにメッセージした方がいいかなと思ってたんだ。それもすっかり忘れていた。
月曜にまた顔を合わせるならそれまでに送っておいた方がいい?かな?
それから、マキちゃんへのお礼の品を考えて。
あと、武器……どうしよう。2階層じゃフローリングワイパーは役に立ちそうにない。
いろいろと考え事をしているうちにアパートについた。
「え?うそ……」
鍵を差し込むと、かちゃりという音がするはずなのにしない。
「開いてる……鍵を閉め忘れた?」
恐る恐るドアを開いて中に入る。
「うそっ」
部屋の中が荒れている。
まだ片付け切れていな段ボールが開けられ中身が散乱している。
それに、テレビや炊飯器に電子レンジが見当たらない。冷蔵庫は少し動かした跡があるけれど、重たくて持っていくのをあきらめたんだろうか……。
ど、泥棒……。
どうしよう。そうだ、警察、警察に……。
部屋の入り口で立ち尽くしていると、ドアが開く音がした。
しまった、先に逃げているべきだった。犯人がまだいたら、何をされるか分からない。
「やだ、帰ってきてんじゃん」
この声……。
振り返ると玲亜がいた。
「玲亜……、まさか、あなたなの?盗んだの……」
玲亜がプラプラと鍵を揺らしながら顔をゆがめた。
「はぁ?淳史のものを盗んだの、有希のほうでしょう?淳史の買ったもの、返してもらっただけよ!」
玲亜の言葉にかっと血が上る。
「違う、二人のお金で買ったものだし、引っ越しの時にもっていくからと言ったら同意したの、玲亜だって見てたでしょう!」
玲亜がぱんっと持っていた鍵を床にたたきつけた。
「二人で買ったっていうから慰謝料代わりに許しただけよっ、それなのに、全部淳史のクレジットで支払ったんじゃないの!しかも分割払い!」
確かに、支払いはすべて淳史のクレジットカードだった。
「淳史の名義だけれど、二人の共同貯金で、私も半分お金を出してるわ!」
ニタリと玲亜が笑った。
「証拠は?」
「え?」
証拠って……。共同貯金を作るときに淳史は「淳史が口座を開設したら振り込むね」と言ったら「手数料が勿体ないから現金で渡してくれれば入金する」と言われて……。
振込にしていれば私のお金だと簡単に証明できた?
まさか、あの時にはすでに淳史はすべてを計画して……?
「ほら、何の証拠もないわよー!ってことはぁ、やっぱり淳史の買ったもんじゃん。返してもらっただけでしょ?あとは何があったかなぁ~」
ずかずかと玲亜は土足で部屋に入っていき、部屋の中をあさりだした。




