レベル2
「あら?有希ちゃんレベル2じゃない」
「え?本当だ?いつの間に……?魔物そんなに倒してないはずなのに……?」
「スライムを知らない間に踏みつぶしてたんじゃない?あ、ちなみに踏んでも倒せるけど、体重が30キロ以上の人が踏むと魔石が壊れちゃうから魔石はとれないのよー」
へー。そうなんだ。ちょっと思ったんだよね。食酢くらいの酸なら多少飛び散ろうが、長靴履いて踏めば簡単に倒せるんじゃないかって。魔石が取れないからみんなやってなかったんだ。
「有希ちゃん妖精のように軽かったけれど、30キロ以上はあるでしょう?」
はい?
「30キロ以上ありますけど、妖精のように軽い?とは?」
ふふっと笑って、マキちゃんが私をお姫様抱っこした。
「ほら、やっぱり軽いわ!」
ぎゃーっ。
「ご、ごめんなさい、こうやって、あの、運んでくださったんですね、え、そうすると、あれ?もしかして、マキちゃんのキャンプ道具……」
片づけてから運んでくれたならいいけれど、あの道具も持って私も運んでくれた?
ふふっとマキちゃんは笑っている。
「ご、ご、ごめんなさい!食われちゃったんですよね!弁償しますっ!」
わたわたとする私をマキちゃんは地面におろした。
「全然問題ないわよー。私、退屈なのが耐えられないんだもの。暇つぶしさせてくれるならそれが何よりの恩返し」
マキちゃんは人差し指を唇の前に立て、バチンとウインクした。
くっ。ウインクが似合うのって、美男美女のあかしだと個人的に思う。
「というわけで、行くわよ!」
「え?行くって?」
「2階層よ、2階層!」
マキちゃんに腕をつかまれて、引っ張られる。
「あ、待って、待ってくださいっ!」
山本さんに声をかけられ足を止めた。
「これ、2階層の地図です。簡単に説明すると、手前この辺りまでに出てくる魔物は、スライムとどつき兎に加えて紫色の蛇です。毒はありませんが噛みますので気を付けてください」
「蛇っ」
身を縮こませるとマキちゃんが笑った。
「大丈夫よ。こんなちっちゃいの。噛むっていっても、手を出したら噛まれちゃうけど、足元ちょろちょろしてるのに噛まれても、靴を履いていれば大丈夫よ?サンダルじゃなければ問題ないわ」
マキちゃんがこんなと手で示したのは30センチくらいだろうか。
いや、ちっちゃくても蛇は蛇だよ。見た目が蛇なら、蛇だよぉ。
「それから、この辺りから蹴り兎が出てきます。カンガルーみたいに後ろ足が発達した兎で、蹴ってきます。どつき兎よりも強い衝撃があります。蹴られたら倒れますから、頭だけしっかり守って倒れてください。蹴られそうだと思ったら、背を向けて丸まると安全です。1度蹴ると逃げていきますので。集団で囲まれなければ死ぬようなことはありません」
死ぬようなことはないといっても十分怖い。
さーっと青ざめると、マキちゃんがつんっと私の鼻の頭をつついた。
「大丈夫よ。マキちゃんに任せなさい。守ってあげるわ」
自信満々なマキちゃんの笑顔に、思わず頷いてしまった。
頷いてしまったからには、マキさんに守ってもらいながら2階層へ進むことに同意したことになってしまって、そのまま引っ張られていく。
ひえー、ちょっと、やっぱり、待って~。
2階層への階段前に腕章をつけた人が立っていた。その前に人が10人ほど並んでいる。
「2階層へ進むのはレベル2以上だ。ステータスのレベル開示を」
と、腕章をつけた人にチェックされている。
その横をマキちゃんは私を引っ張って通りぬけようとして職員に止められる。
「田中さん、その人は」
「さっき山本さんとレベルの確認したわよ。レベル2。私のレベルは知ってるでしょ?」
「あ、はい!行ってらっしゃいませ」
うん?
「マキちゃん顔パス?」
そっと声を潜めて聞いてみる。
「そうね。ベテランだもの。と言っても、一般人が入れるようになったのって8年前からじゃない?最古参でも8年よ。5年もたてばベテランを名乗れるわけね。ふふふ」
そっか。18歳で探索者になった人は8年で26歳。法律変わる前に探索者になった人の資格ははく奪されてないから、最古参が最年少の26歳とかおかしなことになってるんだよね、今。雷電さんがたぶんそういう立場なんだろうな。
あれ?マキちゃん3年もたつととか言ってなかった?5年?ん?3年でもベテランと言えばそう言える?
階段を降りると2階層。またもや草原が広がっていた。
けれど何というか……。




