からまれる
「よし、じゃ、さっそくダンジョン行ってくるわ。早いもん勝ちで出品したほうが高く売れそうだしな」
志崎さんが大きな声を出し立ち上がると、つられるようにみんな立ち上がった。
我先にといった様子で部屋を出ていく。
「じゃ、連絡頂戴ね!頑張ってレベル上げてね!」
ポンっと背中をたたいて雷電さんも出て行った。
私もダンジョンに行こう。会社公認で行けるんだもん。今週の義務分を消費しよう。
立ち上がって出口に向かうと、3人の女性に前をふさがれた。
「サレ女が、シーザー様と連絡先を交換するなんて生意気なのよっ!いい気にならないことね!」
にらまれた。
「こんなものこれ見よがしに持ってきて同情を引くなんて、いやらしい女っ」
花束を奪われ、床にたたきつけられる。
「ちょっと、何するのよ、この花は」
桜が私に用意してくれた……。
手を伸ばして拾おうとしたら、その前にぎゅっと女が花を踏んだ。
しゃがんだ私を取り囲むよう3人の女性が立った。
「いいこと、抜け駆けは許されないの」
「シーザー様と結婚するのは私たちのだれかなの。そのために30歳になってすぐに探索者になったんだから」
いったいこの人たちは何を言っているの?
「足をどけてよ」
花を踏んでいる女の足首をつかんだ。
「ぎゃっ」
まさか足をつかまれると思っていなかったのか女が小さな悲鳴を上げて3歩下がった。
いくつかの花がつぶれてしまったけれど、他は無事だ。
「別に、私はシーザー様とどうこうなろうなんて考えてないけれど……人の大切なものを踏みつけることができるあなたたちの顔は覚えたわ。花を踏むような女性をシーザー様が選ぶとは思えないけれど、言っている意味が分かる?」
花を踏んだ女の顔が青くなる。
「なっ、卑怯よ!シーザー様に言いつける気ね!」
言われて困るようなことしなければいいのに。
「いいえ、私はしないけれど……あとの2人がどうするかは知らないわ」
と、ちらりと残りの二人に視線を向ければ、口の端がちょっと上がっている。
抜け駆けしようと常に思っているから他の誰かも抜け駆けするに違いないって思って私に絡んできたんでしょうね。
はぁーと大きくため息をつく。
「サレ女からアドバイスよ。男の行動一つで人生が変わっちゃう生き方なんてやめた方がいい」
口にしてはっとする。
一部が駄目になった花束を抱えて、電車を乗り継いで家に戻った。
花瓶なんて一人暮らしの家にはないから、コップに水を入れて花束を浸しておく。
「ダンジョンの帰りに花瓶を買ってこよう」
服を着替え、武器とリュックとバケツを手にダンジョンへと向かう。
ダンジョンに入る前に貴重品はロッカー。
それからバケツとリュックとフローリングワイパーをビニールひもでつないで、先を腰に巻き付ける。
「同じ失敗はしない!」
どこで会社に提出するものを集めようかときょろきょろしながら歩いていると、リゾートにいる女性がにらんできた。
「アンタよね?この間ぼこぼこ穴をあけたの。おかげで足を引っかけて大変だったんだから!」
「ごめんなさいっ!」
あ、魔法の練習で確かにたくさん穴をあけたままにしてしまった。
初期化まで半日かかるんだっけ。穴を掘ったら埋めておけばよかったんだろうけど、意識飛ばしちゃったからそのままになってたんだ。
慌ててその場を立ち去る。




