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アラフォーサレ女探索者~土魔法の第一人者になって大活躍するなんて想定外です~  作者: 富士とまと


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出向


 朝礼が終わると、課長に会議室に呼ばれた。

「佐藤さんは、その、探索者になったのかい?それとも誰かと結婚したのかな?」

 そうか。会社側にもいろいろ届け出が必要だっけ。

「探索者になりました。届け出は、1か月以内に出せばよかったですよね?」

 課長がんーと、小さく息を吐き出した。残念だと言わんばかりだ。

「そのな、うちの課としては佐藤さんが抜けるのは非常に残念なんだが……」

 は?

 まさか、探索者になったからってクビ?いや、そんなの労基案件だよっ!

「探索者は毎週月曜日は親会社に出向してもらうことになったんだよ」

「は?週1で出向?」

 クビじゃないことにほっとするけど、親会社って、国内1の大きな商社だよね?そんなところに出向?

「と、いうわけで、早速向かってほしい」

「は?今からですか?」

 課長がうんとうなづいた。

 ここ数日が忙しすぎて頭が付いていかない。

 寝取られ、引っ越し、ダンジョンに行き、今度は出向?

「有希、課長は何の話だったの?」

 席に戻ると、桜がこそっと聞いてきた。

「なんだか知らないけど、探索者になったら月曜は親会社に出向だって……今から行けって」

「は?」

 荷物をまとめて、急いで親会社に向かう。タクシーを今日は使っても構わないということなので遠慮なく使う。

 桜からもらった花束といつもの通勤鞄。タクシーなら花がつぶれることもないだろう。


 日本最大の田中忠商事の本社ビル前にタクシーが止まる。

「うっわぁー、めちゃくちゃでかい」

 見上げる。いや、うちの会社もでかいビルだけど、ワンフロアを借りているだけだ。ここは自社ビル。ビル丸ごと会社のもの。

 どこへ行けばいいのかな。社員は社員証でゲートを入っていく。子会社の社員証じゃ無理だろうな。

 受付へととりあえず足を運ぶべきかな?と思っていたら知った顔を見つけた。

 いや、知り合いでもなんでもないけれど、探索者ランキング1位のシーザーさん。

 シーザーさんも関連企業の社員で出向してきているのだろうか?

 今日は髭もしっかりそってあるし、サングラスもかけてない。探索者ページに乗っていたイケメンそのままだ。細身のスーツを少し気崩している姿も様になっている。

 シーザーさんも受付へと足を向けている。近づくと、ぱっとシーザーさんが振り返った。

「何、俺のファン?ありがとう」

 は?

 シーザーさんが私が手に持っている花束を取り上げた。

「ちょっ、ファンじゃないです。返してください。私のです」

 すぐに花束を奪い返すと、シーザーさんが片手で顔を覆った。

「ごめん、恥ずかしい、勘違いっ」

 真っ赤になっていると思う。

「いえ、その……」

 出向先に花束を持ってくる人がおかしいっちゃおかしいし、シーザーさんには事実ファンがたくさんいるのだろう。勘違いされるようなことをしたのはむしろ私の方で、言い方がきつかったかなとちょっと反省。

 花束から日持ちしそうな花を1輪とる。

 ……ラナンキュラス。花言葉は恋愛系ではなく、祝福やお祝い系だったはずだ。だから祝いごとに贈る花の定番。これなら勘違いもされないあろう。

「あの時はスマホを拾ってくれてアドバイスを下さりありがとうございました」

 頭を下げる。

「あ、ああ、あの時の日暮里西ダンジョンの新人さん」

 花を受け取り、シーザーさんはぴっと指を私に向けた。

「はい。そうです」

「あれから、大丈夫だった?」

 シーザーさんの問いに、苦笑いを返す。

「アドバイスいただいてよかったです。次の日はちゃんとロッカーにスマホとか荷物を預けたので、被害は最小に抑えられました」

「被害?」

「スライムを倒すためのフローリングワイパーと、レジャーシートが食べられました」

 シーザーさんがふっと笑う。

「武器と敷物を失ったのか、そりゃ大被害だ」

 ぽんぽんと私の頭を撫でるシーザーさん。

 わかっているとは思うけれど、35歳です。この扱いは?身長差が30センチ近くあるからなのか?新人をかわいがるベテランみたいな感じなのか?

「スマホや鍵だったらと思うとぞっとしましたよ。本当にありがとうございます」

 どういたしましてと小さくつぶやき、シーザーさんは私の渡したオレンジ色のラナンキュラスを胸ポケットにさした。

「で、新人さんは花を持ってどうしてここに?」

 花、やっぱり場違いですよね。おいてこればよかったかな。でも直帰って言われたし……。

「子会社で働いているんですけど、探索者になったら毎週月曜は出向と言われまして……」

 ふぅーんと言いつつ、納得していない顔で花を見ている。

「それ、俺じゃなくて副社長にか?」

 首をかしげる。

「副社長?え?どうしてです?」

 シーザーさんが目を見開いた。

「なんだ、知らないのか?俺とランクを争って……いや、なんでもない。あいつに渡すわけじゃないのか……じゃあ、誰に?」

「渡すためじゃなくて、私がもらったんです。えっと、、探索者デビュー祝いに、同僚から」

 シーザーさんがさらに目を見開いた。

「祝ってもらったのか?探索者になるなんて大体がこう、否定されるというか、同情的な目で見られるというかじゃないのか?」

 あはは。

 本当は結婚を祝ってくれるつもりだったんだよね、桜も。探索者にならなかったことを祝うつもりだったはずなのにね。


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