第二十二夜 ―― 分かち合われる光と、真の王道 ――
第二十二夜 ―― 分かち合われる光と、真の王道 ――
夜明けの光が、オアシス都市の石畳を白く染めていく。
捕縛された盗賊の頭領と残党たちは連行され、庭には静寂が戻った。ザルカ王は、地下金庫から運び出された膨大な金貨の袋を見つめていた。かつての彼なら、これを軍資金に変え、さらなる征服を企てたことだろう。
サフィアは、夜明けの冷気を吸い込みながら、物語の最後の一頁を開いた。
「王様。黄金は、握りしめれば拳を汚しますが、手放せば道を照らす灯火になりますわ。……サイードとアッザが選んだ『家名の栄え』の結末を」
◆ サフィアの語り 第二十二夜 ――「解かれた呪いと、永遠の繁栄」
最後の亡霊であった盗賊の頭領が倒れ、サイードの家には、ようやく真の平穏が訪れました。
しかし、山の中の洞窟には、まだ四十人の盗賊たちが一生をかけて奪い集めた、莫大な財宝が残されたままです。
サイードは、自分を何度も救ってくれた聡明な女奴隷アッザを、もはや奴隷として留めておくことはできないと考えました。彼は彼女に自由を与え、自らの養子(兄アブドゥルの息子)の妻として迎え入れたのです。
『アッザ、お前の知恵がなければ、我が家はとっくに砂の下に埋もれていた。これからは、この家の主として、共に歩んでおくれ』
アッザは微笑み、最初にした仕事は「洞窟の黄金」を正しく使うことでした。
彼女はサイードと共に、ロバを連れて何度も山へ通いました。ですが、彼らはその金を自分の蔵へは運びませんでした。
金貨は、盗賊たちに襲われ家を失った者たちへ。
宝石は、親を亡くした子供たちの学び舎へ。
真珠は、枯れかけた井戸を掘り直すための職人たちへ。
かつて「あく、しろよ」という言葉で閉ざされていた欲望の門は、今や「分かち合う」という知恵によって、国中の人々の腹を満たすパンへと姿を変えたのです。
サイードの家は、金持ちとしてではなく「慈悲深き名家」として、何世代にもわたって語り継がれました。
そして、あの岩山の扉は、いつしか誰も呪文を唱えなくなり、ただの静かな壁へと戻ったといいます。本当の財宝は、もはや洞窟の中ではなく、人々の笑顔の中に移り住んでいたからです。
サフィアは静かに語り終え、ザルカ王に向かって深く頭を下げた。
「王様。財宝の呪いを解く唯一の呪文は、独占ではなく『分配』にございます。……これにて、アリババと四十人の盗賊の物語は、おしまいでございますわ」
ザルカは、掌に残っていた石榴の汚れを、朝日の中で拭い去った。
彼は目の前の金貨の袋を指差し、控えていた将軍たちに命じた。
「……これらすべてを、オアシスの民に返せ。戦で壊れた家を直し、市場を立て直す資金に充てるのだ。余はもはや、砂を噛むような孤独な王座はいらん」
将軍たちは驚きに目を見開いたが、王の顔に宿る晴れやかな決意を見て、一斉に膝をついた。
ザルカはサフィアに近づき、その細い肩に手を置いた。
「サフィア。貴様の物語は、余の凍てついた国を、内側から溶かしてしまったようだな。……余は今、腹が減っている。それも、猛烈にな」
「ふふ、王様。市場には、今朝焼き上がったばかりの、香ばしい胡麻のパンが並んでおりますわ」
二人は、黄金の袋が運び出されていく喧騒の中、一介の旅人のような足取りで、活気を取り戻しつつある市場へと歩き出した。
そこにはもう、魔法も、嘘も、盗賊の影もない。
ただ、朝日を浴びて輝く「日常」という名の、かけがえのない財宝が広がっていた。




