5.旅立ち
「本当に行くのか」
「あぁ」
ルミエールはもう一度、アストルと会うために旅に出ることにした。ラウルはその見送りをしていた。
「そうか。そんなお前に一つだけ助言をやろう」
「助言?」
「お前がその人間に対する思いは、『恋』というものじゃないのか」
「こい?」
「ああ、そうだ恋だ。俺はそうとしか思えないよ。そう思えないなら、旅で人間と触れ合ってみればいい。きっと分かるさ」
ルミエールは目を丸くした。恋というものを、まだしたことがないからだ。
本当に、人間と触れ合うことだけで、こいはわかるものなどだろうか。
「まぁいいか。それよりお前、『願い』を使うのか。人間と会うために」
「いいや、もっと違うところで使おうかと思う」
「そっか。気をつけて行ってこいよ」
「ああ。また会おう」
そしてルミエールは、旅に出た。
とりあえずの目的地は、首都のルグドゥヌム。行くためには、森を抜けなければいけない。ここから歩いて一ヶ月ほどの距離だ。
季節は冬。ルミエールは相当着込んでいた。
「私はもう一度会うのだ。それまでは絶対に諦めない」
歩いてから三週間ほどが経つ。周りは木ばかりで、街など見えもしなかった。
道中、魔獣などが出たりしたが、何とか倒せた。
魔獣というのは、時の神クロノスが生み出した獣で、クロノスは非常に残忍な性格である。人の不幸を見て楽しむので、人間はクロノスを神として見ていない。
魔獣の中にはもちろん大きく、強いものもいるので、度々討伐隊が森の中へと入り込む。
全員でかかると狩れるので、それほどまで脅威にはなっていなかった。
そして夜。ちょうどいい広さの場所を見つけたので、そこで寝ることにした。
寝ている途中に魔獣に襲われないよう、回りに罠を張る。
木と木の間に糸を張り、そこに鈴をつけるという簡易的なものだ。
音が鳴ればすぐに起きれるので、ルミエールはそのまま少し安心した寝た。
リン、リンリン
鈴の音が鳴る。すぐさまルミエールは起きて、戦闘体制に入る。
だがそこにいたのは魔獣ではなかった。
人間だ。
「こんなものを張っているなんて!卑怯だぞ龍人!」
その人間は憎悪を満ち溢れた声で言う。
右手には剣が構えられており、本気でルミエールを殺そうと思っているのが分かる。
「まて!私はお前を殺す気はない。だからその剣を下げてもらえるだろうか」
物腰柔らかめの声で交渉をする。
「誰が龍人の言うことなんか聞くか!俺は、俺はお前らが大嫌いなんだ!俺ら人間はみーんな龍人のことなんか嫌いだ!」
最後にルミエールを睨み、人間は走って行った。
しばらく、ルミエールは落ち込んでいた。
分かってはいたが、龍人がここまで嫌われているとは知らなかった。
「龍人、か」
一瞬、ルグドゥヌムに行くのを躊躇ってしまった。




