3.人間嫌い
今日、九月十九日は、恒例の人間の様子を見る日だ。
また、いつも通りにルミエールが様子を見て帰ろうとした。
ここ二ヶ月は呼び止められることなく帰っていた。だが、久しぶりにアストルが呼び止めた。
「あの!また、お話をしませんか」
「•••用件は、なんだ」
少し前なら無視を貫き通すものだったのに、こちらの話を聞いてくれようとする姿勢は、アストルを少しばかり驚かされた。
「僕、あなたのことを何も知らないような気がして。『自己紹介』をしませんか」
ルミエールの表情が変わった。まるで、そんなことでいいのかと言いたげな。
「そんなことでいいのか」
アストルの予測は当たった。そして、少し笑いながら
「はい、そんなことで、いいのです」
アストルがルミエールを再び椅子に座らせ、声を張って名前などを申した。
「改めまして、アストル•ラバンティールと申します。趣味は、占星術ですかね」
「•••ルミエール•ガリア。以上」
場の空気が静まり返った。何を話したら良いか、分からなかったからだ。
ルミエールの表情は、申し訳なさそうな感じだ。
「何故、そんな顔をしていらっしゃるのですか」
「そんな顔をか。すまないな。俺は俺自身のことが、よく分からないのだ」
(よく、分からない。この人はきっと、いろいろなものを抱えているんだろうな)
それと、一つの疑念が生まれた。
月日が経つにつれ、アストルとルミエールが話す機会が増えた。四回に一回ほどだったのが、ほぼ毎回になっていた。当然、仲は深まっていた。
「珍しいな、お前がここまで仲良くなれるなんて。ましてや嫌いな人間と」
ルミエールの友人、ラウルはそう言った。ラウルもまた、人間の監視役を担当していた。
「俺んとこの人間となんて、あまり話したことねえな」
「そうか。案外話してみるのもいいんじゃないのか」
ラウルの歩いていた足が止まる。驚いたのだ。彼、ルミエールがここまで言うことに。
話したら、きっと色々なことか分かりそうな気がする。ラウルはそう考えていた。
「アストル、入るぞ」
三日に一度の監視に留まらず、ルミエールは毎日アストルの部屋へ訪れていた。
きっと彼にとって、アストルと話すことは栄養みたいなものだろう。
「毎日ここへ来て、飽きないのですか?」
「不思議と、ここに来てしまっているだけだ」
「そうですか。あっ、聞きたいことがあるんです」
「なんだ」
「ルミエール様は、人間が嫌いではありませんよね」




