2.監視役
監視役は、三日に一度ほど人間の様子を見る役割がある。
今日はその日だ。
ルミエールが扉の前に立ち、三回扉を叩く。
「•••アストル•ラバンティール。入るぞ」
人間嫌いであるルミエールだが、礼儀は欠かさない人だ。
「どうぞ、お入りください」
ルミエールが扉を開ける。そこにはベッドの上に座る一人の青年がいた。どうも、体が少しばかり弱いらしい。
「大丈夫そうだな。では失礼するぞ」
「待ってください!少し、話をしませんか」
青年、アストルは呼び止める。その真意は分からない。
「•••龍人は高貴な種族だ。人間ごときに使う暇はない」
ルミエールが勢いよく扉を閉める。
部屋の中で、アストルがため息をつく。
「人間、か」
それから九日後。
ルミエールが扉の前に立つ。そしてノックを三回叩く。
「アストル•ラバンティール。入るぞ」
「どうぞお入りください」
このくだりが当たり前のようになっていた。
ルミエールが様子がいいこと確認し、部屋から去ろうとする。
「お待ちください!お話、しませんか?」
アストルは毎回、部屋去ろうとするルミエールを止める。だが、ルミエールはいつも無視して扉を閉める。
いつも止められるので、ルミエールは不思議に思っていた。
(あの人間は何故、いつも私のことを止めるのだろうか)
またそれから六日後。
いつも通りルミエールが少しだけ様子を見て帰ろうとしていた。
そして、いつも通りにアストルが止める。
いい加減鬱陶しいと思ってきたのか、観念したのか分からないが、初めてルミエールはアストルの呼びに応えた。
「用件は、さっさと話せ」
「ふふっ、そう言わないでここに座ってください。なんだか長話になりそうなので」
「長話なら帰るとしよう」
「じゃあ短く話してみせます!」
そしてアストルはルミエールを椅子に座らせた。
「ありがとうございます。僕が聞きたいことは一つだけ。何故僕を捕虜として捕らえたのですか」
アストルの口から出たのは、ルミエールを少しだけ苛立たせる言葉だった。
「いざという時に、人質として扱えるからだ。それだけか」
「いいえ、僕が聞きたいのはその答えではありません。体の弱い僕を捕える必要などないでしょう」
一理ある、一瞬そう考えたが、すぐに打ち消した。
「捕虜を選んだやつが、お前でいいと判断したのであろう。話は終わったか」
「はい、ありがとうございました」
もう少し長くなると思っていたのだが、ものの五分ほどで終わった。
ルミエールが帰った後、アストルは本を読み始めた。『龍人と人間』という童話を読んでいた。
その童話は、古くからある有名な話で、最近では劇などが開演されたりしている。
一部の人間はこの話が嫌いで、その題名を口にすると、酷い目に遭わされるらしい。
たまに、そのことでテロが起こるほどのものだとか。




