最終話 希望
手術してから一年が経った。
僕はひとり暮らしを始めている。
母親とは衝突ばかりして、とても一緒に住めなかった。
職場の勤務を増やしてもらい、なんとか生活している。
鼻が通るようになり、さまざまな利点があった。
まず、緊張がほとんどしなくなり、職場で頭が真っ白になることはなくなった。
AIが言うには、呼吸がしんどくて、酸素不足になり、頭がオーバーヒートを起こしていたそうだ。
だから、頭が働かず、真っ白になってたのだろう。
接客も出来るようになった。以前はお客様が来店して、レジに来ると、軽いパニックになっていた。
今は落ち着いて接客できる。
お金のやりとりも以前はたまにミスがあった。混んでくると、おつりのし忘れがあったり。
今は気をつけている。
パートのおばちゃんが話しかけてきた。
「このレジの操作、最近変わったのよね」
「そうですね。最初分からなかったですよね」
何気ない会話だが、すごく嬉しい。なぜって、以前は誰にも話しかけられなかったんだ。さみしかった。
僕が笑顔で会話しているのも良いようだ。以前は酸素不足で余裕がなく、顔が強張っていたと思う。
本当に手術してから、自然と笑顔がでる。
「奥田くん。焙煎頼む。5キロ焼いてくれる?」
「はい。焼けます」
また、女の子が記述で、僕が焙煎機の操作をした。
「火力50%。だんだん落としていきます。3分で30%に落とします」
「はい」
「ちょっと火力高いな。10%まで落とすよ」
「奥田くん。大丈夫?落としすぎてない?」店長が確認に来た。
数値が予定どおり収まってたので、店長も安心して、どこか外に行ってしまった。
僕は店長がそばにいなくても不安じゃなくなった。自信も出てきたんだ。
焙煎も無事終わり、仕事を終わった。
今、正社員の話もでてきてる。みんな、僕が焙煎担当になってくれれば、助かるのにと言ってくれているらしい。
全部が鼻の手術のおかげではないだろうが、明らかに、笑顔がでて、緊張もしなくなり、思考能力もあがり、ポテンシャルは上がった。
匂いはね。半年ぐらいまで、少し左の鼻の嗅覚が戻った。でも1年たってだいぶ、嗅げるよ。
外を散歩してる時、金木犀の匂いも分かるんだ。
片方、鼻の息を出して、塞がっている方は、勇気を出して手術をしてみるのをおすすめします。
きっと、人生をもっと楽しめるようになる。きっと今よりも。
笑顔でいられる素晴らしい日々を、願っています。
おわり




