マメの恋
最初は何とも思ってなかった。あぁ今日もいるな程度。散歩に行く度必ず見かけた君の姿。
茶色くてふんわりしている髪。くりくりとした二重の目。小柄で細身の体。いつしか今日もいないかな。いてくれないかな。に変わっていた。
春になったある日、君は道端に咲いている花を見て
(うわぁ、花が咲いてる! 今年も春が来たんだね!)
と声を上げて喜んでいたね。僕はその笑顔を見て、じんわり温まっていた感情が花のように咲いた。
僕は散歩から帰ってきてからも興奮が止まなかった。
(どうしよう……。僕恋しちゃったみたいだよ)
一人毛布にくるまって体をもぞもぞさせながら唸っていた。
「マメ? どうした? 具合でも悪いのか? 散歩には行かせたしなぁ」
はっ、ご主人様に見つかってしまった。僕のご主人様は、いつも散歩に連れて行ってくれるとても良い人。
(何でもないですよ。僕はちょっと悩んでいただけです)
僕はご主人様を安心させるように手を舐めた。
「ははっ、くすぐったい。元気で良かった」
ご主人様は僕の頭を撫でてくれた。
「マメはいつも元気だよなぁ。俺は最近悩みができちゃってさぁ。どうしたら話せるんだろうな。見てるだけじゃダメだっていうのは分かってるんだけどさぁ」
ご主人様溜め息ついてるけど、どうしたんだろう。
(元気出して下さい! 僕がいますから)
「ありがとう。じゃあまた明日散歩行こうな。よしっ、明日こそは……」
ご主人様は独り言を呟きながら去って行った。
早く君に会いたいです。僕はそう思いながら眠りについた。
翌日。
現在僕はご主人様に散歩してもらっている。そろそろいつも会うあの場所だ。う~。すごく緊張する。
ふとご主人様の方を見上げてみた。なんか真っ直ぐを見つめて口を真一文字に結んでいる。――緊張してるのかなぁ? ご主人様の視線の先を見てみたら……あっ。
そこには君がいた。君のご主人様に連れられて。君のご主人様は、女の人。ご主人様と似た服を着ている。制服っていうのかな。
僕のご主人様はじっとそこに固まって動かない。視線はどこかそわそわしている。
(ご主人様歩こうよ)
僕は引っ張った。
「わっ、マメ。急に引っ張るなよ」
僕は君に近づきたくて進む。
「ふふっ」
君のご主人様が笑った。それはとても優しい笑顔だった。
(おかしいー)
つられて君も笑った。二人は一緒に微笑んでいた。
僕が引っ張って進んだおかげで、君との距離が近づいた。
(また会いましたね。私ずっとあなたの事が気になってたんです。名前教えてほしいな)
(ぼっ、僕。マメって言います。あっ、あなたは……)
(私? 私の名前はハナ)
そう言ってハナさんは、僕に鼻を近づけて匂いを嗅いでくれた。とてもくすぐったい。初めての気持ちだった。
「あれー? この子たち仲良くなったみたいですね。嬉しいな」
「いやぁ、僕も嬉しいです。そっ、そのダックスフントの可愛い子の名前は何ていうんですか?」
「ハナって言います。花がすごく好きなんですよ。そちらの可愛い豆柴ちゃんの名前は何ですか?」
「豆柴だからマメって言うんですよ」
いつの間にか僕らの頭上でも会話が交わされていた。僕のご主人様は照れ臭そうに鼻を掻いている。頬が赤くなっていて、こんなご主人様の表情は初めて見た。
「じゃあ、また。マメちゃんもバイバイ」
ハナさんのご主人様が手を振ってくれた。ハナさんもこっちを見て微笑んでいる。
「さようなら!」
(さようなら!)
僕と僕のご主人様の声が重なった。
この日一日僕のご主人様は、
「うわぁ」
「やべぇ」
と独り言を呟いていて不気味でした。僕も人のこと言えないけどね。
初めて投稿します。小説家になろうビギナーです。よろしくお願いします。後書きって何を書いたらいいのか混乱しますね。