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囚われな悪女  作者:


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7/20

森の妖精


初めて西の街に訪れたラズモン。

人混みに酔い、大通りから外れて森の中に入った。

昔から自然の中が落ち着くラズモンはそのまま森の中を散歩した。

散歩していたら珍しい蝶を見つけ、つい追いかけてしまった。

そして迷子になった。

森の中で遭難したらまずやるべきことは川を探すことだった。

川を探して川に沿って歩けばいつかは道と繋がっていると決まっているからだ。


そして、その川を見つけた時、俺は妖精を見た。


ぱしゃぱしゃと白いワンピースを着て、水の中で横になり浮かんでいた。


その妖精はきらきらときれいな金髪を靡かせて、水と一緒にキラキラと光っていた。


それは神々しく妖精は輝いていた。


我を忘れて見惚れるくらいに。


「あ!蝶々さん!」


妖精は浮かんでた体を起き上げる。

その頭に自分が追いかけていた蝶が止まる。

まるで、甘い蜜に吸い寄せられたかのように。


妖精はそのまま川から上がり、俺に背を向け、俺に気付かずにその森の奥へ行ってしまった。


さっきの光景が忘れられず、しばらく俺は動けなかった。


「うぅん、公爵、様?」


昔のことを思い出していたら、テラが起きて、今どこなのか聞いてきた。


「まだ西に入る手前の街だよ。もう少し時間はかかるからまだ寝てて良いよ」


そう答えるとテラはまた目を閉じた。


その寝顔を見て思う。


やっぱりその時の子にテラはよく似てる。


近い関係なのか、たまたまなのか。


そして馬車は西の街に着いた。


「テラ、着いたよ」

トントンとステラの肩をたたく。


「んぅ?着いた?」

ステラは目を覚まして、窓の外を見た。


「う、わぁ。これが桜?....私、みた、ことがある」


外に広がる街の道を桜が連なっている。

とても綺麗に咲いていた。


「....そうなのか?」


ステラの反応にラズモンはやっぱり西の街で育ったのだと確信した。


「はい。でもこんなに咲いているのは初めて見ました。いつも私の家の庭に一本だけ咲いてたんです」


「そうか。ここは散歩にはいいが花見はできないから、俺がゆっくりできるところを知ってるんだ。そっちに行こう。」


そう言って沢山咲いている桜の下を公爵と手を繋いで歩いた。


暫く歩いて行くと、森の中に入って行く。

さらに歩くと家があった。その庭にたくさんの桜が咲いていた。


「ここは?」


「ここは公爵家所有の別荘だよ、この桜の下で食べようか」


そう公爵は言って、ヤヨリが桜の下にあるテラスに持ってきたサンドウィッチを置いていく。


綺麗に準備が終わり、2人で向かい合って食べる。


「はい!公爵様!ハムいっぱいのサンドウィッチ作ったんです!公爵様好きでしょう?」

そう首を傾げながらサンドウィッチを渡す。


「あ、ありがとう、だがハムはテラも好物じゃないか?テラが食べて良いよ」

そう笑顔で言いながら私に先ほどのサンドウィッチを差し出す公爵に私は首をふりふり振って


「いいんです!これは公爵様のために私が作ったんですから!」

公爵様が食べて!と違うサンドウィッチを取り出す。


「じゃあ食べましょう!」


そう言うと公爵はハムたくさんのサンドウィッチを食べては「美味しい」と言ってくれた。

少し目尻に涙があるのはステラは気づかなかった。


「桜、綺麗。なんだか、あんなに寝たのにまた眠くなってきちゃいますね」

なんて笑って言ったら


「じゃあみんなでここでお昼寝する?」

と意地悪そうな笑顔で公爵が言う。


「え!いいんですか!?」

とすぐステラは桜の木下に寝っ転がる。


「草ももふもふだ気持ちいいし、なんだかいい匂いもします!」

そうはしゃいでいたら、隣に公爵が寝転がる。


思っていたより近い距離に、ステラはドキッと胸が鳴る。


「うん。悪くない。」

そう言って目を閉じる公爵にステラは目が離せなかった。


「うん。悪くない。」

目を閉じ、公爵と同じ言葉を繰り返し呟けば隣からフッ。と笑われた気がした。


それから目が覚めたら隣に公爵様はいなくて、ヤヨリがいた。

私の体に見覚えのない小さなブランケットがかけられていて、首を傾げると、

公爵様が冷えるといけないからとブランケットをかけてくれたんだとヤヨリが教えてくれた。


「公爵様」


別荘に入り夕食時公爵様にブランケットのお礼をする。

「よく眠れたか?」と聞かれたので、すっごく笑顔で「とても気持ちよく眠れました!」と答えた。


それから夕飯も終え、お風呂に入る。


「お風呂に桜が浮かんでる!」


ヤヨリに走って感動を伝えにバンと扉を開ける。

タオルを軽く巻いた状態で出てきた私にヤヨリはぎょっと目を見開く。


「ヤヨリ!お風呂に桜が!綺麗!綺麗!」

と飛び出してヤヨリに走り寄る



「テラ様お待ちください!お戻りください!お風呂へ!!」


そう叫んだヤヨリの横に人が立っていて、それは

言わずもがな公爵様で。


それに気づき私は目を見開き固まる。

公爵もどうしたらいいのか分からないのか固まっている。


「ひ、ひ、ひぁあああああああ!?」


私は一旦お風呂場に戻り服を着る。

それからもう一度お風呂場から出ると、まだ公爵様はいて、


「えと、すみません。いると思わなくて」

真っ赤な顔をして下を向きながら言う。


「いや、こっちこそ。テラの忘れ物を届けにきたんだ。」

一方公爵様はたかだか7歳児の際どい姿を見ただけだから恥ずかしくもなんともないのだろう。もう普通に話してた。


公爵から手渡されたのは髪飾りだった。

お昼寝をして緩くなってしまっていたんだろう。

髪飾りの一つが落ちていたらしく、届けに来てくれたらしい。


「ありがとう、ございます」

そう言って受け取ると、公爵様は部屋から出ていった。

次の日帰り支度をはじめた。


私は一足先に終わらせ最後にもう一度と思い桜の元にやってきた。


桜の木に手を触れる。


「桜って君のことだったんだね。」


「さくら さくら

野山も 里も

見渡す限り

霞か雲か

朝日を浴びて

匂いぞいずる

さくら さくら

花ざかり

さくら さくら

弥生の空は

見渡す限り

霞か雲か

匂いぞ 出ずる

いざや いざや

見に行かん」


昔母が歌っていた歌の一つだ。

歌い終わると視界の端に綺麗な白いヘビを見た。


「あれ、あのヘビ...」


そのヘビは額に傷があった。

そしてその傷を負ったヘビにステラは見覚えがあった。

するとそのヘビは駆け出していく。


「まって!」


咄嗟にステラはそのヘビを追いかけた。

森の奥へ向かうヘビを追いかけ続け、ある場所でヘビは止まった。

そのヘビを抱き上げ、傷を見る。

「あ、やっぱり君あの時のヘビだね」

と昔を思い出す。


ステラは幼少期、母と父が亡くなってから放置された。そんなとき、家の庭に頭から血を流した白い小さなヘビと出会った。

そのヘビの怪我を手当てすると、そのヘビはステラに懐き、よく遊びに来てくれるようになった。

伯爵家に行くまでステラと一緒にいてくれたヘビだ。


「私に気づいて会いにきてくれたの?」

そう話しかけてもヘビは首を傾げるだけだった。


「あ...いけない。何も言わずに出てきちゃった...戻らないと」

来た道を戻ろうと振り返ると、


木々たちがゆらゆらと揺れている。

さわさわさわさわさわさわさわ。

葉っぱの揺れる音と共に声が響く。


『ああかわいそう』

『ああかわいそう』

『助けられるかな』

『助けられるかな』

『でもこのままがかわいいね』

『かわいいね』


周りに人はいないのに、何処からかたくさんの声が聞こえる。


「誰かいるの?」

そう聞いてみても反応はしてくれない。


『まず元に戻してみる?』

『戻してみよう』

『そうだね』

『そうしよう』

『かわいいからもったいない』

『もったいない』


すると突然苦しくなる。


「な、に」

カハっと呼吸ができなくなる。

この痛みを私は一度経験している。

少しして痛みがなくなる。

自分の姿を見るとやはりなんとなく感じてた通り16歳になっていた。

どうして元に...と思った時に聞こえてきた声の言葉を思い出してみた。

もしかしてその声の主達が私を元に戻したのかもしれない。


「どうしてこんなこと....」

咄嗟に背中を見ると契約の刻印がくっきりと浮き出ていた。

そして、その刻印を囲うように小さい子たちがいた。


「.....もしかして妖精?」

そう聞いても誰もこちらをみない。

小さい子たちはまた話し始めた。


『....取れない』

『取れないね』

『悔しい』

『なんで』

『なんで取れないんだろ?』

『助けたい』

『助けたいね』

『でもダメだね』

『無理だね』

『可哀想』


「ねえちょっと」

声をかけた時に被さるように1人の妖精が慌てたように話す。

『誰か来た!』

それに連なって会話が始まる。

『誰か来たね』

『どうする?』

『どうする?』

『諦める?』

『うーん、可哀想』

『取り敢えず元に戻す?』

『元に戻そう』

『そうだね』

『そうしよう』

『隠れなきゃ』

『隠れなきゃ』

勝手な話し合いで決まったみたいで私の身体はまた痛み出す。

「ちょ、と」

苦しくなり、どんどん私の体は小さく幼くなっていく。

痛みが消えた頃には見えていたはずの妖精の姿が見えなくなっていた。


「テラ!!」

声のした方を見ると公爵様とその後ろにヤヨリがいて、公爵様がこちらに駆け寄ってきて、力強く私を抱きしめた。


「どうしてこんな森の中に....」

ステラを抱きしめたまま聞く。


「....ヘビが、見覚えのあるヘビがいて」

そう言ってそのリスを見せる。


「森の中に走っていくから追いかけちゃったんです。」

ごめんなさい。とヘビを抱きしめながら下を向き謝る。


「いや、無事でよかった。そのヘビは...見た感じ毒はなさそうだけど、どうしたい?」

ステラは頭を撫でられながら答える。


「一緒に、連れて帰りたい...です」

公爵にそういうと公爵は優しい顔をして、


「うん。一緒に連れて帰ろうか。」

そして私は公爵に抱っこされながら森の外へ出た。


「心配かけてごめんなさい」

ともう一度謝ると

「次はもうダメだからね」

と頭を撫でられながら釘を刺された。


優しい公爵様。

私はこの森に来て一つ自分の思いに気づいた。


(...私、公爵様のことが...すき)


そして、私と公爵様との西の街への旅は終わりを告げた。

心配をかけちゃって迷惑をかけちゃったけれど、とても楽しい外の旅だった。


「....また、どこかお外の旅に、行きたい...です」

もじもじと伝えたいことを伝えた。


「そうだね。今度は何処がいいだろうか。あぁ、そういえば北の街には秋になると美しい紅い葉で紅葉って言うらしいんだけれど、紅葉が見られるとか聞くね。紅葉はどうかな?」

そう言って公爵は私を見る。


「...北、の、紅葉...」

ステラは呟き、公爵を見る。


「...それ、は。北の街にしかない花なのですか...?」


「うん?紅葉は花ではなくて綺麗な葉なんだ。たしか東の街にも似たような、赤ではないけれど黄色い葉が見られるらしいよ。イチョウの葉って言うんだって」

首を傾げながらステラの様子を見る。


「...私、わ、たしは紅葉ではなく、イチョウの葉が、見たい、かもです」

不安気な顔つきで言う。


「...うん。じゃあ、9の月にイチョウの葉を見に東の街に行こうか。」

そう微笑んで言えば、ステラはあからさまにホッとした表情をした。


(...生まれ育った西の街より北の街を嫌がっている...?)

公爵は戻ったら北の街について調べさせようと決めた。


「楽しみです」

元の嬉しそうな表情になり、公爵も「楽しみだね」と返事をして馬車に乗り込み、公爵邸のある中心街へ帰っていく。





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