公爵の弟②
「早く寝て、たくさん寝ましょ そしたらお正月
お正月には 凧あげましょう
楽しいことがたくさん 遊びましょう
はやく来ないかな、お正月
もういくつねたなら お正月
お正月には たくさん食べて
たくさん笑い、福を呼び、 幸せを呼びましょう
はやく来てほしい お正月
もうすこしで お正月
お正月には たくさん笑おう
楽しいこと、嬉しいことして、遊びましょう
もうすこしで お正月
楽しい楽しい お正月
最初の夜には 願いを込めて 眠りにつきましょう
きっと 妖精が叶えてくれる
はやく来ないかな お正月」
「ふむ。謎だ。お正月とは何だ?」
「ふふふ。私も分からなんですけど、いつも母は12の月にこの曲は歌うんです。」
懐かしいなぁと目を細める。
「そうなのか。あぁ、もう朝日が昇りそうだ。昇る前にもう一眠りしておきなさい。ありがとう。テラの歌のおかげでよく眠れそうだ。」
「おやすみ」とお互い言って、部屋に戻る。
怖い夢を見たのに、不安で仕方がなかったのに、もう怖くない。
もう一度「おやすみ」と小さく呟いて眠った。
今度は夢は見なかった。
それからあっという間に数日経ち、ラウル様がまた旅に出る日になった。
「...寂しいです」
そう呟けばラウル様は嬉しそうに
「今度帰って来る時は土産を沢山買ってくるさ!もしかしたらのためにテラに似合う指輪も用意しておこう!」
「?ありがとうございます?」
「おかしなこと言ってないで早くいけ。馬車がお前を待ってるぞ」
「じゃあいってくるー!」
腕を大きく振ってラウル様はまた旅に出た。
そしてラウル様が旅に出た次の日、私たちはずっと楽しみにしていたその日を迎えた。
「とうとう今日ですね!桜!」
朝、目が覚めてまず初めにヤヨリに言った言葉。
「どうしよう!楽しみであんまり眠れなかった!」
「あらあら、それは大変ですね。馬車酔いしないように薬も飲んで、移動中に寝られれば寝て行きましょう。」
今日のために公爵様が私に新しい服と靴を買ってくれた。それを着て朝食を食べに向かう。
「おはようございます。公爵様」
「あぁ。服も髪も良く似合っているな」
「えへへ。ありがとうございます!」
今日のために公爵様が私に買ってくれた服を似合うと言ってもらえて嬉しくなる。
髪の毛も今日の服に合わせいつもより高いツインテールにしている。
「今日はこの後ヤヨリとサンドウィッチをつくって、桜の下でみんなで食べようと思ってて、」
食べてくれますか?
と聞けば
当たり前だと言うように、「もちろん。楽しみにしている。」と言ってくれて
「はい!」とまた一段と楽しみになる。
朝食を食べ終え早速サンドウィッチをつくりはじめる。
「あ、ヤヨリ、これにはにんじん入れないで!」
出された料理はちゃんと食べるけれど、自分で作る料理くらい苦手なものは入れたくない。そんなことを思ってヤヨリにお願いする。
「...今日だけですよ?」
そう言ってくれるヤヨリに私は笑顔で頷く。
「これにはハムをいっぱい入れてあげよう!公爵様はああ見えてハムが好きなんだよ!私もハム好きだから沢山入れよう!」
以前私が好きな食べ物は何かと聞かれた時に、ハムと答えたら、公爵様も自分もハムが好きだと言っていのを思い出す。
「ブハッ!」
ヤヨリが肩を震わせて笑う。
「なに?どうしたの?」
と聞いても笑ってはぐらかす。
「いいえ、それでは沢山お入れしてあげましょう」
そう涙を溜めて笑いながらハムを私に渡してくれる。
「?うん?」
よく分からないけどハムを沢山入ったサンドウィッチを作った。
それからいろんな種類のサンドウィッチをつくり、あっという間に出る時間になった。
「忘れ物はないか?」
公爵様が私に手を差し伸べながら聞く。
公爵の手に私の手を重ね頷く。
「はい!公爵様は?」
そう聞くと公爵様も頷き返してくれた。
「大丈夫だ。では向かおうか。」
そして私たちは桜の咲く西の街へ向かった。
西の街に向かうのに6時間はかかる。
今が朝の10時だから着くのは16時を予定している。
夜は別荘に泊まるらしい。その別荘はなんでもラウル様が旅の時に泊まる為に東西南北にかならず1つ別荘があるらしい。
「スースー」
走り出してから数時間は外の景色に見惚れ、興奮していたが、前日の睡眠不足から眠気が来たのかステラは寝てしまった。
その寝顔を見ながら公爵は数日前のラウルとの会話を思い出す。
「お前、商人ならこの歌知らないか?」
それはあの日ステラが歌った2つの歌。
それを旅商人のラウルなら知っているかもしれないと聞いてみた。
「その歌たちなら西の街の歌だな。お正月は西の街のお祭りみたいなもので、きらきら星は西の街特有の歌い方だ。他の街はそうは歌っていない。」
「そうか。この歌をテラは母親がよく歌ってくれたと言っていたんだ。もしかしたら、テラは西の街で生まれ育ったのかもしれない。西の街に連れて行っても良いのだろうか」
「あー、桜の花を見にテラを連れて西の街に行くんだっけか?」
「あぁ」
「大丈夫だろ。お前がいるんだから」
あの時の会話を思い出しながら、窓の外を見る。
(もしかしたらテラの生まれ育ったかもしれない街か)
不安に駆られながらも、公爵はこの街の昔あった出来事も思い出していた。




