見つけたのは
次に目が覚めた時、私は見覚えのない広いベッドに横たわっていた。
「....ここは...」
キョロキョロ周りを見渡しても何も分からない。
ここはどこで、私は助かったのだろうかと一瞬期待してしまったけれど、どう見ても普通の部屋じゃない。
広すぎる部屋に恐怖に身を震わせる。
ここはどこかの貴族の家だ。
てことはあの男に通じてる家門かもしれない。
逃げようとベットから降りようとするも足の震えで思うように進めず転んでしまう。
すると扉の方から大きな音がする。
そちらを見るとメイドが、真っ青な顔して立っていた。
「まあまあまあ!?大変!大丈夫ですか?!お怪我は!?」
そう言いながら私に近づいてきた。
「.....は」
私は彼女を見て確信した。
ここはどこかの上位貴族の屋敷だと。
「.....来ないで!!」
魔力で風を吹かせ自身の周りを囲いながら叫ぶ。
「近寄ったら攻撃するから!!」
精一杯叫び私はそのまま逃げようと窓の方に近づく。
「なにごとだ」
メイドの後ろからまた人が来た。
「こ、公爵様...」
そうメイドは口にする。
公爵ですって...?
この国で公爵家は3つしかない。
あの忌々しい伯爵家と通じてる家門はそのうちの2つ。
残り1つのラズモン公爵家はどこにも属さない、表には殆ど出てこない家門。そして冷酷残忍と聞いている。そんな家門が私を拾うわけがない。
あいつの手が私の首に回った気がした。
「来ないで!お願いだからもう!」
そう言って窓から逃げようとしたその時だった。
男が私の風に手を触れる。
普通の風じゃない。手を触れたら千切れるはずの威力のはずだ。
切れないどころではない。風そのものが消えた。
驚いている隙に男は私に触れる。所謂だっこ状態だった。
「大丈夫だから落ち着くんだ」
そう言いながら男は私の背中をぽんぽんと叩く。
「は」
咄嗟に魔法を使おうとしたけれど魔法が出ない。
さっきのことといい、もしかしてこの男...魔法を消せる?
違う。今重要なのはそこじゃない。魔法を消滅させる魔法を使えるのは唯一、ラズモン公爵だけだ。
この人は、あの伯爵家と縁もゆかりもない家門だ。
私は助かったのだと、初めてここで安心した。
「.....ここ、は、ラズモン公爵家ですか...?」
そう男を見て口にした。
「あぁ、そうだ」
そういう男はずっと私の背中をぽんぽんしている。
そして何故だかそのまま私の瞼が閉じていく。
(安心したら眠くなってきてしまった...寝てる場合じゃないのに...)
「おね、がい、誰にも言わない...で」
すうすうと男の腕の中でステラは眠り、それを確認した男はゆっくりとステラを元いた場所に寝かせた。
「この子はどこの貴族の子だ?」
ステラが着ていたボロボロの下着は質は一級品。
ボロボロだろうがわかる人にはわかる質感だ。
「大変申し訳ございません。着用していたお召し物には特に家門のわかるものがなく....」
ステラは転移魔法を使ったが、魔力ギリギリでたどり着いた先はこの公爵家の庭だった。
「....似てるな」
寝ているステラを見てつぶやいた。
「取り敢えず今は寝かせておけ。起きたら俺の所に。」
そう言い公爵は部屋を出ていった。
それから数時間がステラは目を覚ます。
「んぅ?」
そして傍にいたメイドに挨拶され、ステラは自分の状況を思い出した。
「あ...お願いします!!私をここに!ここでなんでもしますから!どうかお願いします!」
ここはステラにとって安全な場所。
あの男の手の届かない、身を隠すにはこれ以上はない場所だ。
「取り敢えず、公爵様が起きたらお連れするよう言われておりますので、ご案内させて頂きますね」
そう言われ、私は今度はメイドに抱っこされ部屋を出た。
そして公爵がいる部屋に連れてこられた。
「公爵様、お連れいたしました」
「入れ」
そう扉の向こうから声がしてからメイドは部屋に入った。
そしてその瞬間私はメイドの腕から逃げ、そのまま床に降りた後、走って公爵の前に座り込み頭を下げた。
「お願いします!なんでもしますから私をどうかここに置いてはいただけないでしょうか?お願いします!」
そのままずっと頭を下げていたら突然の浮遊感。
気づけばまた公爵に抱っこされていた。
「なにかあるのか?....お前はどこかの貴族の子だろう」
「わ、わたしは...」
私の身体がガクガクと震える。
「いやいい。取り敢えず夕飯にしよう。」
そう言われ時間を見ると19時だった。
そして並べられた豪華な夕飯。
私は椅子に座らされ、公爵も自分の席に座った。
そして公爵はずっとこちらを見てくる。
暫くして「食べないのか?」と聞かれたので、
食べていいんだと思い困惑しながら私は目の前にある食事を食べる
「君、名前は?今何歳だ?」
「ス....ううん、テラ!じゅう...あ、えと、7歳、です!」
ステラ、と答えそうになり、咄嗟にテラと名乗る。
年齢も、咄嗟に16だと言いそうになり、自分の姿を思い出し指で7と出し答える。
そう言うと公爵は顔を顰めた。
(貴族の7歳の食べ方ではないな。教わってこなかったのか?)
薄々思っていたことだったが虐待にあっていたのではと公爵は考える。
「君は、いやいい」
咄嗟に聞こうとしたが、流石に7歳の子供に聞くことではないと思い口を閉じた。
それから暫くしてカチャンっと大きな音を立てて、ステラが使っていたフォークが落ちた。
そしてその後ステラが震え出し謝る
「ご、ごめんなさいごめんなさい。」
「大丈夫だ。怪我はないか?」
そう聞けば、震えながら頷く。
「落としてごめんなさい。ごめんなさい。」
そう繰り返し言う。
「テラに怪我がないならいいんだ。新しいフォークを」
そうメイドに伝えて公爵は立ち上がりこちらに来る。
ステラは咄嗟に怒られるっと腕で顔を隠す。
その様子に公爵は顔を顰め、新しくメイドが持ってきたフォークをステラに握らせ、その上に自分の手を重ねた。
そして、ステラの両手をお皿の前に持っていき、丁寧に目の前の肉を切っていく。
ステラは呆然とした。
ステラは5歳で父と母を亡くし、叔父はステラにまともにご飯を与えていなかった。
だからステラはパンやスープで10歳まで過ごしたため、殆ど食べ方を教わっていなければ、まともにフォークやナイフを使ったことはなかった。
伯爵家でも伯爵に与えられていたため自分で食べていない。自分で食べさせてもらえなかった。
いつ如何なる時も与えられたものしか食べられなかった。
口に運ばれる食べ物を拒絶し、叩いて落ちるフォーク。その度に暗い部屋に閉じ込められた。食べ物を粗末にしてはダメだと。物を落とすのはダメだと。
抵抗しても続けられた恐怖にステラは諦めたのだ。
だから、ステラは食べ方を教わってこなかったため、5歳の時の食べ方と少し見ていたのを今日初めて見よう見まねで食べていた。
「あ、ありがとうございます」
かぁっとステラは頬を赤くしながら言う。
自分の食べ方がおかしいことは自覚はある。
それが恥ずかしいけれど、なんだか昔を思い出し涙が出た。昔、父と母にもこうやって教わっていた。
その涙を公爵は勘違いしたのか
「テラくらいの年頃の子はこうやって食事の仕方を覚えていくものだ。気にすることではないよ」
そう言いお肉を切っていく。
「....はい」
自然とステラは笑みが溢れた。




