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囚われな悪女  作者:


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17/20

一触即発


「....ちっ。」伯爵はチッと舌打ちをする。


「いいの?ステラが痛がってるけど...?」

公爵が伯爵の腕を握り力をこめると、伯爵も腕に力が入りステラの髪がぶちぶちと髪が抜ける。


「...離さないならこの腕切る。」

そう公爵が睨めば


「.....はぁ。.....またかよ。」

そういい、とステラを離す。

公爵は躊躇なく伯爵の腕を切るだろう。けれど伯爵はステラを傷つけられない。そして自分の腕を失うわけもいかない。仕方なく手を離した。


そしてバッと公爵の腕も振り払い伯爵は公爵を睨む。


「ステラは僕のものだ。」

必ず返してもらうから。


そう言うと、ステラに「またすぐ会おうね」と言い、大会中止のピストルを打つ。

オレンジ色の煙が空に色づく。


そしてテントの方へ向かっていくのを見守り、姿が見えなくなり公爵は初めて私の方に顔を向けた。


「テラ!!」

ぎゅっと私を抱きしめてくれる。


「こ、公爵様...っ」

ステラは涙を流す。


「ご、ごめんなさい!私のせいで怪我を負わせて、わたし、それなのに私公爵を見捨てて自分だけ助かろうと...っテル様から逃げようとっ....公爵様を助けなくちゃいけなかったのに...っごめんなさい...っごめん、なさっ」

ボフンと公爵に腕を引かれて言葉が途切れる。


「俺が言ったんだよ。たとえ俺が死んだとしてもお前をあいつのところに行かせたくなくていくなって。お前はそれを聞いただけだ。」

だから自分をそんなに責めなくていいんだと。


それを聞きステラはさらに涙が止まらなくなる。


「ありがとうっ、助けてくれて、ありがとうっ」

泣きながら、嗚咽しながら伝えたいことが全然伝わらなくて、必死に言葉にしたのはこれだけだったが公爵は嬉しそうにステラを抱きしめる。


「俺の方がありがとう...」

そのまま2人は抱きしめ合って、ステラは疲れていつのまにが眠りについていた。

そして気づけば宿舎のベッドの上で寝ていた。

....ふたりで。


ステラは驚きのあまり転がる。

ゴンっとベッドから落ち壁にぶつかる。

その音で起きたのか、公爵も起き上がる。


「...なななな、な」

テンパるステラに公爵は笑いながら、ステラが俺のシャツを離してくれなくてと笑いながら言う。


「わ!私、くさ!」

そして自分の姿を見る。昨日の狩りの服から変わっておらず、自分のボサボサな頭も見てボーゼンとする。


寝起き顔も最悪だし、服は汚い。匂いは土のドブの匂い。そして頭もボサボサのパサパサ。


「い、いやああああ!」と顔を覆い泣き崩れる。


真っ赤な顔をして照れているステラに公爵は内心安心していた。


今回のことがステラにとってトラウマになっていなかったか。

もう自分と一緒にいたくないと思ってしまったのではないかと。

公爵は内心ハラハラし、ステラが気付かないうちに消えないように本当は不安で一緒に寝ていたのだ。


「....ステラ。」


「え...。公爵様?....ステラって...。」


「....うん。ちょっと、伯爵がステラステラうるさくて嫉妬した。」

そう言う公爵は真っ赤になっていく。


「や、べつにちょっと呼んでみたくなっただけだよ」

くしゃっと前髪を握り、顔を隠す。


「...今回の件で、きっともう言い逃れはできませんね....。今回の件、どう処理されたんですか...?一応人が亡くなっているんですよね...?」


「幸い、というか、亡くなったのは男爵家の子供達だったんだ。だから権力でねじ伏せられて、今回は不慮の事故として処理された。一応伯爵家は当分おとなしいとは思う。」


(本当にそうだろうか....。)

テル様は言った。近いうちに会おうと。

テル様だってわかっていたはずだ。事件を起こし、犠牲者だって出ることを。それを想定していないはずがない。犠牲者が男爵家だったことも偶然なのだろうか。被害がたまたま男爵家だったから不慮の事故と言えた。これが子爵家以上の家門なら難しかったはずだ。

嫌な、予感がする。


「....たぶん、まだなにか起こる気がします...。」


***


テルは昔から綺麗で美しいものが好きだった。

「この魔法陣美しい。」

たくさんの美しいものに魅了された。

その中でも一際美しいと心を奪われたのは、


「ここの森に妖精が出たことがあるんだとか、ほんとかなぁ」

西の街の森に足を踏み込んだ。

妖精を探すために。

実際妖精はいなくて、ただただ綺麗な森という印象を抱いた。

あきらめて帰ろうとした時に森の奥から水の音がした。

(妖精...?)

テルは心を躍らせて水の音が聞こえる方へ向かう。


そこには妖精ではなく、1人の女の子がいた。


(....ひとか。)

そう呟き、少女の顔を見る。


(...きれい)

一目で心を奪われた。


さらにそれだけではなかった。

少女の髪が突然茶髪だったのに金髪になったのだ。

テルは驚きのあまり声が出なかった。

この光景は神秘的であまりにも美しい光景だった。


(なんて、なんて美しいんだろう。)


本物の妖精に出会えなかったが、妖精のような美しい人間を見たテルは心が躍った。


(彼女が欲しい。僕だけのものに。)


そして、なんとか両親を説得して迎え入れられたのはステラが10の年だった。


(2年会わないだけでこんなにも美しく...)

どんどん美しくなるステラにテルはどんどんハマっていった。


「ダメだよ。ステラはナイフもフォークも持ってはいけないよ」


(ナイフは危ない。綺麗な肌に傷がついて、残る傷になったら大変。フォークも危ない。)


「勉強なんてしてはいけないよ」


(僕なんて勉強のしすぎで手に豆ができてしまった。ステラの綺麗な手にそんな汚いものはいらない。)


「ステラはお酒を飲んではいけないよ」


(酔った人間を見たが醜かった。ステラは綺麗なんだから。)


「ステラは自分で服を脱いではいけないよ」


(ネックレスは爪が割れてしまうかもしれない。服も脱ぐ時に爪を引っ掛けて肌が傷付いてはいけない)


もちろん全て世話をさせる人間にはステラの肌を傷つけないための教育をしてから担当に就かせた。

勿論ステラに触れさせないため手袋は全員につけさせた。


「ステラに決して触れてはいけないよ」


(汚い人間が綺麗なステラに触れてはいけない)


こうしてステラと僕の世界は完璧だった。

完璧だったのに。


逃げ出した。

ステラが逃げ出した。


僕の手から、僕の世界から。


「ステラ、だめだよ。外は汚い。ステラ。」


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