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囚われな悪女  作者:


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狩猟祭2


「目は負傷したまま、腹の傷は治る。ということは」

公爵は考えながら魔物の死角である左目から飛び出し、今度は右目を切る。


魔物は叫び声をあげる。

公爵は一度距離をとる。先ほどのように治った場合を想定して距離を少し空けて魔物と対面する。


魔物の傷は治る様子はない。

そのまま次は額に傷をつける。

そしてさっきの同じように距離を空ける。


そして暫くしても切ったところが治らないところを見ると体の傷は治るが顔の傷は治らないのかもしれない。

一応治ることも想定し、大きい首を狙う。


「くっそかたいなぁっ!!」

半分くらい切っても落とすことができず一度剣を抜く。


また一度距離を空けて治らないことを確認し、再度逆の首を切って、頭を切り落とした。


ゴトンと首が落ち、魔物は黒い霧になり消えていく。

無事倒したことを表していた。


「公爵様!」

ステラが駆け寄ってくる。


そして、その後ろにさっきまでは確かにいなかったはずの新しい魔物がステラの後ろにいた。


魔物の口が開き鋭い牙がガパァと開きその牙はステラに向いていた。


「!!後ろ!!」


そう叫ぶが間に合わない。

公爵は咄嗟にステラの腕を引き自分の腕を前に出す。

そして公爵の腕は噛まれ、大量の血が流れた。

公爵はもう片方の腕でその魔物の目を斬る。

その瞬間魔物は叫びを上げる。口が空いた瞬間に公爵は腕を引き抜き、魔物の首を切ら落とした。


「ごめんなさい!公爵様私のせいで...!!」

腕が!血が...!いや!!

ステラが公爵の腕を抑える。ただぬるぬるする感触とこの手を離したら腕がもげてしまうのではと思うくらい公爵の腕はギリギリ繋がっているように見えた。

ステラの手は尋常じゃないくらい震えながら必死に抑えている。

「テラ、無事でよかった」

そう言う公爵に涙が濡れて公爵の顔が見えない。

「ごめんなさい!ごめんなさい私のせいで!」

どうしよう、どうしたらいいのとステラは考える。


「どうしたら治ってくれるの...いや、どうしよう...」

公爵様...と呼ぶも、公爵を見ると顔を青くしており、汗も尋常じゃないくらい出ていて、息も乱れている。


「なんで...もしかして...毒...?」

腕の血をよく見ると、腕が紫色に変色していた。


「ど、どうしたら...っ」


「ステラ。」

声のする方を振り向く。


「テル...様...」


「うん。残念だね。公爵、このまま放っておいたら確実に死んじゃうね...?」


「...っ」

伯爵の言葉にステラは涙を流しながら公爵の腕を押さえる。取れないように細心の注意を払って握り続ける。


「....僕なら公爵を助けてあげられるよ」

そう言う伯爵にステラはバッと顔を伯爵に向ける。

伯爵は笑っていた。

すごく嬉しそうに。


「...どうしたらいいのか、ステラなら....わかるよね....?」

ステラに伯爵は手を伸ばす。

伯爵はずっと笑っている。嬉しそうに。楽しそうに。


「わ、たし...ステラじゃ...」

ないと言おうとしたが、伯爵はその言葉を遮る。


「わかってるから。君がステラなのは。」


...無理だと思った。これ以上誤魔化せないし、誤魔化したら公爵様が死ぬかもしれない。

心は行きたくないと叫んでいる。

それでも公爵を治したい。私のせいで傷ついた人をもう見たくない。


「わ、たし...」

行きますと言おうとした瞬間だった。


反応のなかった公爵が言う。

「い、くな。いか、ないでくれ。」

苦しそうに、切なそうに絞り出す声にステラの胸が痛む。


どうしたら、どうしたらいいの。

ステラは決められない。

伯爵の手を取れば公爵様は生きていられる。

私が伯爵の手を取らなければ公爵様は助からない。

でも私にいくなと、行かないで欲しいと言う公爵様の言葉に私はどうしたらいいのかわからない。

心が叫んでる。伯爵のところに行きたくない。

公爵様が行かないでと言っているのだから行かなくてもいいじゃないかと。

でも行かなければ公爵様は助からないかもしれない。

私は、私を助けてくれた公爵を助けなくていいの...?

....嫌い。こんな汚い私大嫌い....。

どうして公爵様を助けることを第一に考えられないんだろう。どうして伯爵のところに行きたくない自分の心ばかり考えで逃げられる理由ばかりを探してる。

いやだよ。私もうこんな自分大嫌い。


「....うるさいな」

そう伯爵は呟くとこちらに歩いてきて、公爵の方へ来たかと思えば公爵を蹴飛ばした。


その瞬間、なんとか繋がっていた腕が切れてしまった。


「ゔがぁっ」

公爵は声を上げる。

伯爵は何事もなかったかのように、ステラに声をかける。

「早くしないと強行突破で連れてくよ。どのみち君は僕にこのまま連れて行かれるんだ。公爵を助けたいか死なせたいかだけで考えれば?」

そう笑いながら言う伯爵の言葉は私の耳に入っていなかった。


「う、腕が。公爵様の...うでが!!ぁぁぁあああ!」

取れた腕を押さえていたため取れた手をステラが待っていた。

ステラは取れてしまった腕を抱きしめて泣く。

「やだ!やだ!公爵さまぁ!」


私が伯爵を無視したことと、私が公爵に縋り付くのを伯爵は眉間に皺を寄せ、ステラの髪を引っ張った。


「もういい。このまま連れて行くから。」

ずるずると髪を引っ張られながら引きずられていく。

ぶちぶちと髪の毛が何本か抜ける音がする。


「いやぁっ!はなしてぇ!公爵様!」


そう言いながら公爵に手を伸ばしてステラは叫んだ。


「お願い!!公爵様の腕を治してぇええ!!」


その瞬間小さな光が私たちを囲む。


『よんだ?』

『よばれた!』

『コレを?』

『治す?』

『治す!』


小さな光は公爵を囲い、取れた腕が光に包まれ飛んでいき、公爵の元へいく。


「なに...これ...」

ステラは目を見開く。


「....妖精だ。」

隣で伯爵が呟く。


「....妖精....。」


目の前の光景を誰もが見入っていた。


『まずいね』

『すっごくまずい!』

『腐ってるね』

『腐ってる!』


公爵の腕が、紫色になってた腕が元に戻っていく。

光に包まれて、取れた腕もくっつき始める。


『逆に腕つけちゃう?』

『つけちゃう?』

『いいね!』

『面白そう』

『面白そうだね!』

きゃきゃきゃと笑いながら声が聞こえる。


公爵が、「反対はやめてくれ」と言うと、

『だめだって』

『だめなんだ!』

『つまんないね』

『ねーつまんない!』


そう言いながら元通りに腕が治った。

公爵も信じられないのか手をぐーぱーぐーぱしている。

光たちは自然と消えていた。


私は目の前の光景に惚けていると、伯爵が私を引っ張る力に私は自分の現状を思い出す。


「素晴らしいな。やはり。」

伯爵には何が起きたかわかっているようだった。

私を見ながら恍惚とした表情で私の頬を撫でる。

ゾワっと鳥肌が立つ。

「いやっ!」とバシッと手を叩くと伯爵の表情は無表情になった。

「また....やり直しか....」

その言葉で私は伯爵に以前言われた言葉を思い出す。


「僕の言うことは絶対だよ。僕のすることを拒否することも許さない。君は、僕の言うことを絶対に聞くんだ。聞かなければ...わかるね?」


あの日々を思い出し体が震える。

「刻印が出たら、君は僕のものに戻るんだ。どのみち君に自由なんてない。」

伯爵の声がまっすぐ私の耳に入ると体が言うことを聞かない。長年の恐怖はそう簡単に消えるものではないし、忘れることなんてできない。


「僕のところに帰っておいで」

そう言いながら私の髪を引っ張り引きずる。


「い、た」と体に力が入らず拒絶ができず、そのまま引きずられると思っていたら、横からパシッと腕が取られる。


「....はなせ」

公爵が伯爵の腕を握っていた。

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