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囚われな悪女  作者:


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10/20

イチョウの葉


「わぁあ!」

一面黄色の景色。


「凄いです!すごくきれー...」

上を見上げながら呟く。

感動しているステラの横で公爵はそっと箱をステラに出す。


「遅くなったが俺からのプレゼントだ」

そう言って手渡されたのは髪飾りだった。

キラキラと輝くイチョウと同じ黄色の可愛い髪飾りで、ステラはとても喜んだ。

知らずとは言え、まるで誕生日を祝われているかのようだった。

「わぁあ!嬉しいです!可愛くて、素敵!大事にします!」

そう言って早速取り出しヤヨリにステラの頭につけてもらう。

緑色のドレスを着ていたため、黄色がよく映える。

「嬉しい!こんなに嬉しいことが沢山あるなんて、私は幸せ者ですね!」

と笑顔で言うと頭を撫でられた。


公爵は何かある度にこう私の頭を撫でる。

その度にステラは嬉しくなる。


すれ違った家族の話が聞こえた。

「今日はごちそーだー!」

「ヨヨの誕生日だからな!」

「えへへ。ヨヨ5歳になった!」


その会話を聞いて公爵はふといつがテラの誕生日なのだろうと考え、聞いてみた。


「テラは自分の誕生日はいつなんだ?」

そう何気なく聞いた言葉だった。


「え」とステラは引き攣った笑みを浮かべる。

その姿を見て公爵は、誕生日は祝ってもらえなくていい思い出がないのかもしれない。と自分の失言に落ち込んだ。

「すまない。嫌な事を聞いたかな」

「あ、ちがいます!イヤなんじゃなくて、えと、」

もじもじしながら言う。

「今日、なんです。....誕生日...。」

それを聞いた公爵はガラガラと崩れ落ちる。


「す、すまない!今すぐ帰ってプレゼントと豪華な夕食の準備を...!」

あわあわと慌てている公爵の袖をステラが掴む。


「だめ!まだ帰りたくない...です。プレゼントももうもらったからいいんです!こんな綺麗なイチョウを見せてくれて、こんな素敵なプレゼントも。私の最高の誕生日になりましたから!」

ぎゅっと袖を掴む。

「...そうか。」

そう言って公爵とイチョウの葉を見る。



「...公爵様、私は公爵様のこと好きです。」

イチョウの葉を見ながら言う。


「俺も、」

好きだよと言われるのがわかっていて、ステラはあえて公爵の言葉に被せて言う。

「私の好きは、あなたの婚約者になりたいと言う意味です。」

そう言って公爵を見る。その時の公爵の顔はずっとわかっていたことなのに、ステラの心はズキンと痛みが走った。


「....公爵様の気持ちはわかってます。もし、私が7歳の...8歳の子供じゃなければ、...17歳くらいの女の人なら婚約者にしてくれてましたか?」


ステラはそう聞きながら公爵に向けていた顔をイチョウの方に向ける。公爵の方を見て話すことができなかった。


「....俺は、テラのことを子供だからと断っているんじゃないよ。...俺は昔に妖精のような女の子に出会ったことがあって、その子に恋をしたんだ。」


初めて聞く公爵の恋愛事情にステラの胸は痛んだ。

公爵もイチョウの葉を眺めながら話を続ける。


「その子は別の人の婚約者になってしまったんだけど。まぁ、勿論接点も関わりもなかったから当たり前なんだけどね。それを聞いた時は勿論ショックだった。それでも数年経てば忘れると思ってた痛みだったんだが、数年後見かけた時に変わった彼女を見ても、僕の胸は高鳴り、そして傷ついた。そして気付いたんだ。」


公爵は遠い目をしている。きっとその時を思い出しているのだろう。少し傷ついた表情と、愛しいと言っているような表情だった。その横顔を見るステラは自分のことを写していないその瞳に、そっと目を逸らす。


「きっと俺は彼女を好きな気持ちは変えられないんだと。」


「....そう、なんですね」


「...きっと君にはこれからもっと広くいろんな人と出会うだろう。俺なんかよりいい人にきっと巡り会えるよ」


「...そう、ですね」


そう言って沈黙が続いたのでステラは「ご飯!お昼にしましょう!」そう言って公爵の手を引いた。

それから何事もなかったかのように接して、いつもと同じように過ごした。


それから夜になり、ステラはこっそり泣いた。

分かっていたつもりだった。

公爵の優しさは子供に対する優しさだったと。

私に向けてる視線は親心の暖かさだったと。


そこにほんの少しの恋情が見えていた気がして、私は少しだけ、ほんの少しだけ期待をしていた。


時々私を見つめている公爵の視線はあまりにも優しくて、甘かったから。


8歳の子供じゃきっとダメだと分かっていたけれど、私はこれ以上どうすることもできないから。

この姿で賭けてみるしかなかったから。


くやしい。


つらい。


悲しい。


初めての恋が。


初めての失恋が。


「こんなに恋ってつらいんだなぁ...。公爵様もこんな気持ちだったのかな...」

そう呟いて涙を拭っても拭っても涙は止まることはなかった。


翌朝私の目は見事に腫れた。

これでは隠れて泣いた意味がない。隠しようがないほど腫れている。これでバレない方が無理な話である。


「泣いた理由もバレるに決まってるよね...」

仕方ない...

ちりりんとヤヨリを呼ぶ。


「おはようございます、テラさ....ま」

お辞儀をして私の顔を見るとあんぐりと口が開く。


「どどどうなさいましたのです!?その瞳!ハチですか?!どこからか蜂が飛んできてお刺されに?!」


「...ちがうちがう。これは、涙で腫れて...」


「...涙...ですか?」


きっと何も思い当たらないのだろ。イチョウを見た帰りも普通に帰って来ていたし、夕飯も普通に過ごした。本当に寝る時間まで普通だったのだステラは。


「...公爵様に振られてしまいました」


そう言うとヤヨリは驚いた顔をした。

たぶんステラが公爵を好きだったとは考えたこともなかったのだろう。

公爵は我が子のように可愛がり、

ステラは実の親に対するように懐いていた。

そう思っていたのだろう。


「....そうですか。...テラ様は勇気を出されたのですね」


そう言って私の手をぎゅっと握ってくれて、昨日たくさん泣いたのに、ヤヨリの言葉にまた涙が出て来た。


「...うん。すごく勇気を出したの...私の初恋...だったの...」


そう呟くと、ヤヨリは何故か涙目になっていて、


「...なんでヤヨリが泣きそうなの?」


そう涙目で笑えば、


「...テラ様はとてもよく頑張りました...。公爵様との気持ちは少し違うのかもしれませんがお互いが大事だという気持ちは同じなはずです。テラ様にはこれからもっといい出会いがあります!それこそ公爵様なんて目じゃないくらいのいい男が現れます!」


「ふふっ...それ公爵様にも言われたわ」


そう言って2人で抱きしめあっていたら気づけば朝食の時間を過ぎてしまった。


それに涙の後でひどい顔をしていて、そんな顔では会えないと思い朝食は部屋で食べた。


それから変化が訪れるのはすぐのことだった。


公爵様は私に会いに来なくなった。


そして会ったとしても私に触れることがなくなった。


何故だかいつもと変わらない会話、変わらない笑顔なはずなのに、そこには私と公爵様の間には大きな大きな壁が聳え立つかのように、大きな溝として生じた。


「...やっぱり私が告白したせいだろうか...」


私に期待をさせないように、なのだろうか。


私に触れなくなった公爵にステラは寂しさを感じた。


「言わなければよかったのかな...」


庭で花に話しかける。独り言である。


そしてその様子を公爵は窓から見ていた。


「俺はテラにどう接すればいいのかわからなくなってしまった...」


そう言って公爵は項垂れる。

その様子を見ていた執事は


「そんなことを悩み、ここ数日は仕事に集中してたわけですか...見てくださいよ!この!私の!クマを!!」


そう言って資料をテーブルに叩きつけ、自分の目元を指差す。

そこには、濃いクマ。

ここ数日彼が眠れていないことを表していた。


「...仕方ないだろう。仕事と言わなければ距離の保ち方がわからないんだから」


そう言って執事が置いた資料を読む。


「何言ってるんですか。あの年頃の子は確かに大人に憧れを抱きます。だからと言ってそれが本当に恋かなんて限らないじゃないですか。まあもし本当に恋だとしてもあの子の年頃じゃすぐ次の恋に進んでいますよ」

公爵への気持ちなんてあっという間に消えますよ。


そう執事は気にすることではないと言う。


だが公爵は経験しているのだ。


あの歳で自分は忘れられない恋をしたことを。


だからと言って自分は同い年くらいの少女を好きになったので、歳の差でどうなんだろうと思う。


それに彼女は執事の言う通り愛に飢えていて、一番初めに優しくされた自分を特別に思ってしまっただけかもしれない。それこそ恋と勘違いしているのかもしれない。


公爵は頭を抱える。


「...取り敢えずテラと同年代の子供を数人招待してくれ...」


そう執事に言い、とりあえずテラに友達という名の輪を、テラの世界を広げさせようと公爵は考えた。



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