表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
囚われな悪女  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/20

人は彼女を悪女と呼ぶ


「まぁっ!また品のないっ!」

至る所から非難の声がする。


「ステラ、ほらもっと寄って」

耳元で囁かれる。心は拒絶しているのに、体が言うことを聞かない。


「はい。テル様」

声も体も自分のものじゃない。テル様のものになっている。自分の意思ではなく、テル様の言う通りに体が動く。


そして、私とテル様を見る貴族たちは私を悪女と罵った。

私の家は普通ならこんな所にいるわけがないしがない男爵家。

伯爵家であるテル様が私を見初め、私の世界が変わった。

分不相応なドレスにジュエリー。そして、婚約した当初まだ10歳ということもあり結婚ができないのに婚約という身でありながら伯爵家への滞在。

婚約者の立場から沢山のパーティーへの参加。


私はテル様を誘惑し籠絡したと噂され、その噂はあっという間に広まった。

そしてそれからというもの何故かテル様が用意するドレスはどれも派手で、更に噂になった。


もう慣れた。沢山の噂に軽蔑の瞳。


パーティーから帰ってくると私はある部屋にテル様と入る。

ここは、私の部屋であり、私にとっては鳥籠である。

その部屋に入るとテル様は必ず鍵をかける。

誰も入ってくるわけがないのに。

この部屋には窓もない。そして、鍵は内側からは開けられない仕様だ。


「ステラ」

その一言で私の身体は硬直する。


「こっちにおいで」

そのまま言葉通りにテル様のいるベッドへ向かう。


「はい、テル様」

これは私の意思なんかじゃない。


テル様は私の服に手をかける。

「あぁ、美しいね」

そう言いながら私の背中に手を滑らせる。

私の背中には彼との契約の印がある。


この刻印は彼が私の主人であるという主従関係を表すものだ。

これがある限り私は逃げられないし、彼のいうことは絶対なのだ。


この契約も私は売られたため、こんな事になっている。

私が5歳の頃父と母を亡くし、叔父が私の世話をすると言った。

それから義理の母と義妹が来て、父と母の残したお金で派手な暮らしをし始めた。

そしてお金がなくなったら叔父は私を売ったのだ。


「あぁ、ステラが17になるまであと半年か。長かったなぁ」

そう言いながら私の刻印の上にキスを落とす。


この国では17に成人となり、結婚できるようになる。


「ステラが僕のものになるのが楽しみで仕方ないよ」

そう嬉しそうに話すのを聞くのは何度目か。


「テル様、私も、嬉しいです」

心にもない言葉を口にする。

そんな言葉に嬉しそうにするテル様は私の額にキスを落とすと部屋を出ていった。


私はパーティー以外はずっとこの部屋にいる。

いや、出られないのだ。

ずっとこの刻印があり続け、私を縛り続ける。

部屋には鍵をかけられ出ることすら叶わない。

本当に羽をもがれた鳥のよう。


私はずっと飼われたまま死んでいくのだと思っていた。


たまたまだった。こんなこと私がここに来てから初めてのことだった。


定期的に届く彼からのプレゼント。

「では、失礼致します」

そう言って部屋を出た執事は初めて見る顔だった。

まだ慣れていなかったのか、部屋の鍵をかけ忘れたのだ。

普通確かに人のいる部屋に鍵をかけることはまずない。だからかけ忘れたんだろうか。

いや、今はそんな事を考えている暇はない。

出られる。

この部屋から。


自分の鼓動が大きく音を鳴らしている。

ドアノブに触れる私の手が震えている。

パチンと一度私は自分の両頬を叩いた。

そしてガチャリと扉を開けて、私は駆け出す。


「たしか....ここ」

向かった先は医薬室。

ここは伯爵家お抱えの医師の部屋。伯爵に何かあった時の色々な薬が置いてある部屋。

扉をゆっくり開ける。

誰もいなかった。


「.......やっと、自由になれる。」

そう呟いてステラが手にしたのはただの睡眠薬と腹痛薬と頭痛薬。

そしてそれらを一気に沢山飲み込んだ。

ただの薬。害もないがそれは量を守ればの話で。

過剰摂取と、複数を同時摂取するとそれは毒にもなりうる。


「ゔっ....」

ステラは苦しくなる。

霞む視線の先に思い出したのは父と母の姿。


逃げることのできない鳥は、自由を求めて自害を選んだ。


はずだった。



「.....え」

暑くなり、痛み出す体。

あぁ、私死ぬんだと感じたはずだった。


なのに、少しして落ち着いた体に驚きを隠せない。

一番驚いたのは鏡に映る自分の姿だった。


「.....どういう.....」


自分の目にうつる姿は己の幼少期の姿だった。


「......まさか、ちぢんだの...?」


死ぬことに失敗した私は絶望を感じた。


それと思うと同時に外がザワついている事に気づく。


「どうしよう....もう私が居ないことに気づかれた...?」


私に彫られた刻印は彼の所有物の証。すなわち私が何処にいるか分かる。


だが一向に気づかれる様子がない。

不思議に思って鏡をもう一度見るとそこにあったはずの刻印が消えていた。


「....え、刻印が、ない」


信じられないと何度も鏡に映る背中と実際の背中を行ったり来たり見る。


「....もしかして、私の体の時間が巻き戻ったことによって契約前に戻ったから消えてるってこと...?」


うそ。もしかして私に猶予が与えられたのだろうか。

再び10歳になるまでは刻印は現れないのだろうか。

そんな期待に胸を躍らせた。


「今みる限り7歳ってところかしら」


髪が金色から茶色になっていた。

これはステラが幼少期の頃の、7歳までの髪色だった。そして8歳の誕生日以降私は金色の髪になった。

そのことから8歳より前の年だと分かる。


とりあえず逃げられるかもしれないと心が浮つき、ダボダボの服を脱ぎ捨て、下着のワンピースの丈を破る。袖紐もダボダボのため玉結びをする。

そして何とか動けるようになり、私は精一杯の魔力でできる限り遠い街に転移陣を発動する。


「転移魔法発動」

そう言って魔力を込める。


そして私は1人外に出られた。

そう。あの鳥籠から私は自由手に入れた。


「ゔっ....」

 

転移魔法でたどり着いた先は森の中だった。


「おかしいな、南の街に転移のはずだったんだけど....」


どこだろうここと思いながらも外に出られた嬉しさを噛み締めていると、視界がグニャリと歪んだ。


「こ、れは....魔力欠乏症....」


南の街に行くのに、体が小さくなった私の魔力は転移魔法を使うには魔力が足りていなく、使い果たしたらしい。


魔力欠乏症は発症すると早ければ1週間の眠りで回復する。

それは即ちここから動けず、目を覚ますこともない。

今のステラにはこれ以上にまずいことはない。


「.....もう、ダメ....」


視界がぼやけそのまま倒れ込む。

そしてステラの視界は真っ暗になった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ