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Café:Katze Wald へようこそ  作者: 跳びイワシ
看板娘とエッグトースト
10/10

こんにちはー跳べなくなった、跳びイワシです。

今朝、運動をしようと縄跳びをやったら、二十飛びが出来なくなってました。残念。


今回は真面目…?なお話。


 普段は穏やかな店内に、今夜は少しだけ物々しい雰囲気が立ち上っていた。外は雨。じっとりとした湿り気がより、空気を重くしている。


「で、どういうことだ店主。」

「お知らせしたとおりです。」

「……詳細を。」

「全員が揃った段階でお知らせいたします。」


 鍛えられた肉体を持つ、獅子の男――レグルスがシュヴァ―ルに問いかける。この大陸に散らばる12人の管理者。それら全員が揃うまで、待たねばならないのか。レグルス、いや、レグルス以外の出席者も苛立つ気持ちを、手元の紅茶を飲むことで抑える。


「あの、モノグサは出席するんですの?」

「ええ。と言うより、出席させますので。ご安心を。」

「……彼、今どこにいるんですの?」

「深海の帝都にでも観光に行ってるのでは?反応がそちらのほうにありますし。」


 透けるような白髪に、深紅の複眼を持つ、蟲人の乙女――シラツユがあきれながらシュヴァ―ルに問う。話題のモノグサとは、まだ出席していない最後の管理者――ホセの事である。彼は生粋の旅人であり、界を問わずフラリとどこかに行ってしまう。アツリョクナベやショーユ。それらを持ち込んだ常連も彼である。


ーカラン…


「マスター。連れてきたよー。」

「ちょっと、髪は引っ張らないで!痛いから~!」


 時々、店の手伝いをしてくれる白兎の少年――ハックがボロ布のようになったホセを、引きずり連れてきた。ホセが何か騒いでるが、気にせずホセの席に座らせる。彼は、かわいらしい顔をしている者の、竜さえも蹴り飛ばす武闘家である。シュヴァ―ルを除く管理者全員が、ボロボロのホセを驚愕の目で見つめる。管理者全体でみると、ホセは強くない。しかし、だからと言って普通の人にこうもあしらわれるほど、弱くはないのだ。本当に、何があった……?


「「「「「…………。」」」」」

「………。それでは全員揃ったようですし、円卓会議を始めたいと思います。よろしいですか?」

「「「「「………。(え、この状態で始めるの……?)

「では、司会は私シュヴァ―ルが務めさせていただきます。」


 痛いほどの沈黙を貫き、シュヴァ―ルは会議の開始を告げる。


「本日の議題は、サラード王国で保護された異邦人マリについてです。」

「サラード?それってあなたの国よね。おじいちゃん。」

「うむ。つい先日、どこかに行ってしまってな?捜索をしておったのだが、ここにいたのか。良かった良かった。」


 シラツユに問いかけられたドワーフの男――サハラシェードが朗らかに笑う。彼を含め、管理者の何人かは国の代表として君臨し、大きな争いが勃発しないように目を光らせている。


「よかった…なのかはともかく。お配りした書類をご覧ください。マリから聞きました、サラード王国の対応を書き出したものです。」


 ペラ…と管理者たちが紙をめくる。そして、ため息。


「この、料理がまずいってのはなんですの?前に食べたことがありますけれど、サラードの料理はここまで酷評される味じゃなかったと思いますわ。」

「おお、それはだな。最初に我が国の料理を出した時、マリ殿が辛くて食べれないと言ったのだ。」

「「「まさか………。」」」

「辛くない、香辛料を抜いた料理を出したのじゃ!」


――はぁ……。


 全員は思った。サラード料理から香辛料を抜いたら、それはただの味なし料理でしかない。と。香辛料が入ってるからこそ、かろうじて料理と言う枠組みに入っているだけなのだ。流石。塩と酒、香辛料の味が分かれば後はいらないと言い切る種族なだけある。レプラコーンやノームなど、まっとうな味覚を持つ種族も住んでいるが、大多数がドワーフが占める国である。考えるだけ無駄だろう。


「お察しの通り、マリにとってはあまりおいしいとは思えない料理だったそうです。」

「なるほど。……この、寂しいというのは?」

「マリは推定ですが、5歳前後とみられます。こちらと違いがなければまだ、親と一緒に寝て居てもおかしくない年ごろでしょう。そのため、通常の異邦人に対する扱いでは、寂しさを必要以上に感じてしまったのでしょう。」


 この世界では、さまざまな種族がいるため、5歳で大人となる種族も、5歳はまだ赤子という種族もあるが、人間であれば、5歳はまだ親と共にいることが多い。サラードはドワーフの国だ。人間とは時の流れが異なる。故に起きてしまったことなのかもしれない。


「………確かに、これを見る限り、マリ…だっけ?その子が逃げ出したくなるのは理解できるわ。」

「しかし、このまま彼女を放置するわけにもいかないだろう。」

「シュヴァ―ル。君が言いたいのは、彼女をどうやって保護するか。だね。」


 黒衣を纏った美女――マリベルが納得し、エルフの長老――オーギュストがまっとうな意見を溢す。


「ええ。もちろん、マリの意思も確認しますので、仮ということになりますが、マリを保護していただける場所を考えております。どなたか、可能な方はいらっしゃいますか?」

「こちらとしてはやぶさかではない。が、獣人(ビースター)の多い我が国では、マリ殿に負担がかかるかもしれん。」


 レグルスが言う。人間と獣が混ざったような姿の獣人(ビースター)は、姿が多様だ。人間に獣の耳や尻尾が生えただけの姿や、二足歩行する獣―シュヴァ―ルのような姿の者もいる。マリが、シュヴァ―ルやジュディの姿を見て恐慌状態にならなかったため、大丈夫だとは思うものの、猫も鹿も一般的な生き物だ。


「キサラギ公国も、受け入れは可能ですわ。話を聞く限り、マリ殿は始祖様と同じく二ホンから来た様子。馴染むのは早いとお思いますわ。ただ、こちらも蟲人(インセクター)がおりますので、どうでしょうか…。」


 シラツユが、すこし、しょんぼりしながら告げる。彼女が見守るキサラギ公国は、マリと同じ異邦人によって建国されている。文化的な面で見れば一番最適なのだが、何せ、キサラギ公国には蟲人(インセクター)が住んでいる。独特な風貌の彼らは、獣人(ビースター)以上に、人を選ぶ。


「こちらは無理だ。何せ皆、力の加減ができない脳筋ばかりだ。事故が怖い。」

「残念ですけれど、わたくしのところも、無理ですわね。幼い今なら大丈夫ですけれど、大人になったときにどうなるかがわかりませんわ。」

「僕は論外だよね。なにせ旅ばっかしてるし。子連れで旅はできないね。」

「ああ、ホセさんにはもとから期待してないのでご安心を。」

「ひどくない?!」

「いや、いたって普通の事だと思うがな。エルフの里は受け入れができるぞ。ただ、辺鄙な場所にある故、移動が大変かもしれんな。」

「私の工房も行けるわよ~。マリちゃん素質ありそうだから、弟子にしちゃおうかしら。」


 魔族の男や妖精女王など、皆が口々に話始める。それらをまとめてしまえば、今日の会議の本題は終了である。


「では、本題はこれで終わりとします。なにか、ご連絡等のある方はいらっしゃいますか?」


 そうして、今日も陽がゆっくりと登ってゆく。この夕方から始まった長い会議も、夜が明ける前には終わるだろう。

 さて、まとめたものをマリさんに見せますか。マリさんが気に入るところがあればいいのですが。


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