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――こんなはずではなかったんだけど。
楽しめない山にいても、意味がない。
そのうえ危険だ。
海斗は山を出ることにした。
その時、聞こえてきた。
赤ちゃんの泣き声にしか聞こえないものが。
――こんなところに赤ちゃんが?
不思議だし不気味だが、気になった海斗は声のするほうに行ってみた。
そして見た。
そこにいたものは、身体は完全に猿だった。
しかし頭は毛深いが、その顔は毛のない人間の赤ちゃんの顔だった。
それがわんわん泣いていたのだ。
――ええっ?
海斗はそれをしばらく見ていたが、急に怖くなり、その場から走去った。
走っている最中も背中から赤ちゃんの泣き声が聞こえ続けていた。
が、しばらく走ると、それも聞こえなくなった。
「どうした?」
血相を変えて家に飛び込んできた海斗を見て、じいちゃんがいった。
ばあちゃんも奥からでてくる。
海斗は興奮しながら言った。
「猿の化け物が! 猿なのに、顔が赤ちゃんで……」
「おまえ、山にはいったな!」