第五話 ドキドキ初戦闘!!!!
「全員車からでろや!!!」
かなり激昂している様子。これは命が危ないのではなかろうか。
「そうやって一般人を装っても無駄だぞ、貴様らが魔王の手先であることは明白だからな。」
「ちょっと、落ち着いてくださいよ、別に魔王の手先なんかじゃないですよ......!」
必死にジョセフが説得を試みるものの、もはや言葉が通じるような相手ではなさそう。
どうしても誰かが車の外にでないといけないようなので、私とセリオンが矢面に立つこととした。
「えーと、トリスタンさん、ですか?一旦深呼吸しましょうよ......ね?」
「うるさい、もうさっさとぶっ殺してやる!」
そう言うと彼の手元は突如真っ赤に燃え上がり、私の方を向きこう言った。
「ファイアーボンバー!!」
彼がこう唱えたかと思えば、次の瞬間彼の手元で燃えていた火球が私にめがけて飛んできた。
私はすんでのところで火球を避けることができたが、少しでも反応が遅れたら直撃していただろう。
すると彼がこう呟く。
「これは手強いやつだな......まさか避けるとは......」
明らかに命の危機が迫っていて、今すぐにでも逃げ出すべきだとセリオンに伝えようとし、彼を見ると、顔は真っ赤、殺気立った目をしていて、ただならぬ顔色になっていた。
彼は興奮状態のまま車のトランクスに向かうと、荷物の中から拳銃を取り出した。
「てめえ、なんてことしやがる!!ぶち殺すぞ!!」
まずい。本当に死人が出てしまう。
なお我が国では拳銃の所持は厳しいものの許されていて、特に公人は護身用としてリボルバー所持することが推奨されている。
「なんだと!?こっちのセリフだこの野郎!」
本当にまずい。セリオンをひとまず止めなければ。
「せ、セリオン!い一回落ち着け!」
「落ち着けませんよ!相手は本気で殺しにかかって来てるんですから!!」
どうしたものか。血を流さずにこの場を乗り切る方法はあるだろうか。どうしてもないなら撃ち殺すほかないが......なにかいい案はなかろうか。
二人は睨み合い牽制している。動いたほうが死ぬ。その間に私も車のトランクスから自分のリボルバーを取り出し、トリスタンに向けこう言った。
「いいかい、ああなた、わ私達はいつでもあなたを倒すことができる......だからまずは話し合おう?ね?」
相手もこの厳しい状況を慮ってくれたようで、まずは手のひらの火球を消してくれた。セリオンも構えていた銃をおろした。
「このトリスタン様が苦戦するなんてな、久々にドキドキしたよ。」
なんかこのトリスタンというやつはまさしく自分が主人公だと思っているタイプの勇者なのだろう。
私達は魔王の手先ではないと必死に力説したところ、どうやら納得してくれた様子。
話していると、ジョセフがふとあることに気づく。
「あれ、そういえばトリスタンさんはパーティーは組んでないのですか?」
「ああ、パーティーか。実はパーティーを追放されたばかりでな......自分のスキルが弱いからって理由で追放されちゃったんだよ。でもいつかぜってえ見返してやるって意気込んでいるのさ。」
勇者の世界も単純ではないのだな。本来はもう勅令が出されているので処罰を行わなければならないのだろうが、彼と話していると、とても純粋で努力家であることがひしひしと伝わってきた。スキルとかまだよくわからない言葉もあったけれど、私はなぜか彼を応援したい気持ちが湧き上がってきた。
ひとまずは処罰をしないことにした。
「ああ、迷惑かけて悪かったな!これからはこういうの気をつけるわ!じゃあな!」
そうして私達はトリスタンさんに別れを告げ、再び車を発進させた。人生で初めての戦闘というやつを経験した。
フィオリーノまではまだまだかかりそうだ。
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