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作者:

 私は今、音楽を聞きながらこの作品を書いている。私はいつも音楽を聞きながら眠っている。母が死んだとき私は音楽を聞きながら泣きじゃくった。音楽とはそういうものだ。

 耳が痛い。アラームの音で起きた私は無造作に飛び散るイヤホンをみて今日も音楽を聞きながら寝落ちしたことに気付いた。そのうち耳が聞こえなくなることをわかっていながらも聞き入ってしまう。私はメニエール病というものにかかっていて、手術はしているが治る見込みはないらしい。だからこそ今のうちに音を聴いていたいというのもあるかもしれない。という文章を入れてみたが誰にも何も思われなさそうなので次に行こう。


 私は今日、私の人生について書こうと思っている。私がいかに壮絶な人生を歩んできたか、私がいかに価値ある人間か。誰かに知ってもらいたい。


 私が生まれたとき母の手を掴んで離さなかったそうで「つぐみ」と名付けたそうだ。そこからは何もなく、精々、弟が生まれずに死んだことくらいだろう。

 小学5年になって私はある海外のアーティストに出会った。その人が作る音楽は素晴らしく11歳ながら音楽の世界を知りたいと思った。その人のライブに行くためにほぼすべての曲を覚え毎日のように聞いていた。春頃だったろうか、そのアーティストが自殺したと知ったのは。幼い私は熱を出し一週間ほど寝込んだらしい。そんなことと言えるくらい、数カ月後には忘れていた。


 中学生になり、私には友達ができた。どうやら洋楽が好きなようで授業中ですら洋楽のことについて話していた。ある時、その子が私の好きだったアーティストのことを一番好きだと言ってきた。どうみても俄なその子に対し無性に苛立ちを覚えたのか、私は歌った。その子より知っていると分からせるために。私は歌った。本気で好きだったアーティストの音楽を。承認欲求を満たすがために。音楽なんてそんなものだ。


 高校に入り、母が病気になった。それとなく看病してきたが父の不倫もあってか、あっけなく死んだ。泣く暇もなく母を骨壺に入れ、父に母が死んだことを連絡し家に帰った。ふと、昔好きだったアーティストの音楽を聞いてみた。心地よい音色に揺られるうちに、私は泣いていた。好きなアーティストのライブに行くと言ったとき喜んで一緒に曲を覚えてくれた。小学校の授業参観で私が友達がいると嘘をついていると悟られたその日の晩、押しのけようとする私を笑顔で抱きしめてくれた。病気になっても、父が不倫しても私の話を笑顔で聞いてくれた。そんな母の顔が、音楽と共にあふれ出てきた。





 音というものは同じ音色であってもその時の状況、心情によって感じ方が変わる。そして、音楽というものは「思い出」を運んでくる。昔聞いた音楽と共に昔の情景を思い出す。記録ではなく、記憶として。それは自分だけの価値となる。

 私はもうすぐ、その価値が無くなる。母が死んで音楽の世界を知れた頃には、もう手遅れだった。この十数年間全てを掛けて手に入れた思い出はモノクロでしか味わえない。でも、それでも私の価値が消えるまで、私はもっと、音楽を知りたい。


だから私は寝るときに音楽を聞いている。その日あった幸せを忘れないために。だから私は母が死んだとき音楽を聞いていた。この悲しさと母との思い出が消えないように。だから私は音楽を聞きながらこれを書いている。今日この日、私の価値を示すために。音楽とはそういうものだ。



ご静聴ありがとうございました。



この作品を読んでくださり本当にありがとうございます。

あとがきは作品の主旨などを書いているので自分の考えを持てた方は観ないでほしいです!それが正解ですから。




この話には音楽というものを通じて、自分の価値は意外と近くにあるということを言いたかったもので、それとは逆に価値を失うときもすぐだということを伝えたかったので、死を入れてみました。特に感動したり鳥肌が立つような上手い文章は作れませんが、これを期に音楽、ご自身の価値を再認識してくださると幸いです。最後まで観てくださり、本当にありがとうございました!

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