未来から来た男
そっくりさんと私は、私の家で話をすることになった。
「……俺が言うのもなんですけど、こんな簡単に男を家にあげたら駄目ですよ」
「も、もちろん!普段はそんなことしないよ!
でもなんでかな。貴方のことは信頼できる気がするの」
「……だったら良いですけど」
「それで話ってなんですか?」
「まずは自己紹介を。俺の名前は佐藤です。
下の名前は職業柄秘密でお願いします」
「さ、佐藤って本名ですか?」
「……ご想像にお任せします」
絶対偽名だ。
私全く信用されてないのかな。
そりゃそうだよね。知らなかったとはいえ不倫してたんだし。
「……単刀直入に言います。俺は貴方を幸せにするために未来からきました」
「はい?」
「いきなりこんな事言われてもすぐには信じられないと思いますが事実です」
「み、未来ってそんな……」
信じられない。
そう言おうとするも佐藤さん(おそらく偽名)の目があまりにも真っ直ぐで、タイムスリップなんて荒唐無稽な話としか思えないのに信じたいと思ってしまった。
こんな真っ直ぐな目をする人、生まれて初めて会った。
なんだか不思議な人だな。
「タ、タイムマシンって本当に出来るんですね」
「……信じてくれるんですか?」
「まぁ、正直信じがたい話だなとは思いますけど。佐藤さんの目がすごく真っ直ぐだったから信じたいなって」
「……ありがとうございます。まずは私の仕事から説明させてください」
「は、はい。お願いします」
「私は生前評価審査官という者です。
未来の日本では生前の善行と幸福度の割合が釣り合っていない人を過去に戻って幸せにする制度があるんです。未織さんも釣り合いが取れていなかったため幸せにするために参りました」
「……な、なるほど?す、素晴らしいご職業ですね」
「ありがとうございます」
正直話の半分も理解出来てない気がする。
「そ、それであの。幸せにというのは具体的にどう?」
「……それが失敗してしまいまして」
「え。私幸せになれないの……!?」
「あ、いや。そういう意味じゃないです。元々の計画では俺があのクズ男のフリをして、未織さんに既婚者であることを告げ別れる予定だったんです。それをまさか一目で別人と見抜かれるとは。未来の最先端技術を使って変装したんですけどね」
「な、なんかすみません?」
「いえ。むしろ嬉しかったですよ。俺の方がカッコいいんですよね?」
「か、揶揄わないでください!」
「オーラが違うんでしたっけ?」
「未来には記憶を消せる装置はありますか?」
「残念ながらないですね」
「うぅ。忘れてください」
「嫌です。きっと一生覚えてます。それくらい嬉しかったんですよ」
佐藤さんの表情が本当に嬉しそうで、それなら別に良いかと思ってしまった。
我ながら単純だ。
「まぁ、結局あの男とは別れられましたし結果オーライですね」
「ふふふ。そうですね!」
「未織さんの幸せの定義ってなんですか?」
「し、幸せの定義ですか?」
「はい。それを参考に今後俺がサポートする内容も決めたいと思います」
「うーん。……私だけを思ってくれる男の人と結婚して幸せな家庭を築くことですかね。」
「……なるほど。それが理想なのにあんなクズ男に引っかかった理由に心当たりはありますか?」
「……だ」
「だ?」
「……男性経験がほとんど無いせいかと」
「……なるほど。だったら慣れましょう」
「か、簡単に言わないでください!」
「簡単ですよ。俺とデートの練習すれば良いじゃないですか」
「……はい!?」
「何回かデートすればきっと慣れますよ。それに未織さんが付き合う男も俺が見定めますし」
「そ、そこまでさせる訳には!!」
「大丈夫ですよ。これも仕事の内なので」
「で、でも……」
「むしろ未織さんが幸せになれない方が困ります。未織さんが幸せになれなかったら何のために過去に来たのか分からないじゃないですか」
「そ、それはそうかもしれないですけど……」
「だから。ね?」
佐藤さんから上目遣いで見つめられ。
「わ、分かりました」
と気づいたら答えていた。
「よし!じゃあ、今日からよろしくお願いしますね。未織さん」
「よ、よろしくお願いします。佐藤さん。
じゃあ、佐藤さん。元の顔に戻ってもらえますか?」
「あ、無理です。未来に帰らないと戻せません」
「ま、またまたご冗談を〜」
「さすがの俺でもこんな冗談言いませんよ。
俺だって、顔変えられるものなら変えたいですよ。鏡を見るたび吐き気がしますし」
「ほ、本当に戻せない?」
「はい。戻せません」
「そ、そんなー!!」
私の幸せ計画、さっそく前途多難な予感です。




