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きたぞ
どごん と蹴破るように押し入った男を、子どもを押さえ込んでいた坊主は、いつもの動かぬ表情で見つめた。
「ああ、来たのか」
「・・・・・・・」
ベッドの上では、坊主に濡れた布で顔を拭かれている子どもがいた。
手つきが荒く、耳の裏をそのままごしごしやられ、先ほどの声でシュンカが嫌がる。
「嫌だって言ったって、おまえ、風呂にもはいんねえんだからしかたねえだろが。 ―― ほら、コウセンがきたぞ」
「―― コウセン さま?」
なんだか、ひどく舌足らずに呼ばれ、思わず顔を見てしまった。
あれから、ひと月近くたっている。
ひと月ぶりに会う子はひどい様子だった。
そうして、この、おのれを見る眼が ――――。
「 コウセン さ、ま だ 」
不思議な色の眼が、色を戻したように瞬いた。
一気に何かが伝わってきて、途端、コウセンの虚が埋まってゆく。




