いつ ひらく?
「おまえがいくら泣いても悔いてもリンはもどらねえ」
「――・・・っ」
「・・・泣いてたってしかたねえだろ。たしかに、おまえはリンを守れなかった」
「・・う・・」
「そんで、おれは、リンも、・・おまえも、守れなかった。――すまねえ」
「・・・・・」
そこでようやく、坊主は、腹が立っているのは、己にかもしれぬと思いあたる。
「ひとりで負うな。今度のことは、みなで負う。言ったはずだろ?もらったもんは、おれたち伍の宮のみなで考える。テツも、アシも、おまえひとりに押し付けるなんざ、しねえ。それどころか、おまえを守れなかったと、それこそ悔いるはずだ。――みな、おまえのことが好きだ。わかるか?」
初めて子どもの、泣きすぎた為か熱の為か、ひどく赤くなった目と合い、スザクはなんだか笑ってしまった。
「いいか?眼を閉じろ。そうだ。息をゆっくりして、少し、『自分も閉じて』おけや。身体がちゃんとして、おまえが大丈夫だと思えるまで、そのままでいい。無理に、開けんなよ。皆が心配しても大丈夫だ。おれが伝えておく」
――と言ったのに、
「まあ、おまえらには言わなくとも、いいかと思ってな」
「・・・・・すざく・・おまえってやつは・・・」
絵師が脱力して坊主の着物を離す。
ヒョウセツが首をふり、セリが扇子で弟の頭を勢いよくはたき、サモンがなだめる。
叩かれた頭をかく坊主への文句は、一気に、消えた。
絵師が知る、スザクという男は、情がなくて、空気がよめなくて、自分勝手で、それでいい、と考えている男だ。
いや、―― そういう男だったはずだ。
なんだか嬉しくなって見た男の姉も、扇子を広げ、微笑んで見返す。
「しかし、それなら、いつひらくのだ?」
サモンが、肝心なことを誰にともなく聞いた。
「シュンカが、大丈夫だと思えたときだろ」
こたえた坊主に、ヒョウセツが組んでいた片腕を上げる。
「―― それ、ぼくに考えがあります」
静かに微笑むような声だった。