表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/47

いつ ひらく?

「おまえがいくら泣いても悔いてもリンはもどらねえ」

「――・・・っ」

「・・・泣いてたってしかたねえだろ。たしかに、おまえはリンを守れなかった」

「・・う・・」

「そんで、おれは、リンも、・・おまえも、守れなかった。――すまねえ」

「・・・・・」


 そこでようやく、坊主は、腹が立っているのは、己にかもしれぬと思いあたる。


「ひとりで負うな。今度のことは、みなで負う。言ったはずだろ?もらったもんは、おれたち伍の宮のみなで考える。テツも、アシも、おまえひとりに押し付けるなんざ、しねえ。それどころか、おまえを守れなかったと、それこそ悔いるはずだ。――みな、おまえのことが好きだ。わかるか?」


 初めて子どもの、泣きすぎた為か熱の為か、ひどく赤くなった目と合い、スザクはなんだか笑ってしまった。


「いいか?眼を閉じろ。そうだ。息をゆっくりして、少し、『自分も閉じて』おけや。身体がちゃんとして、おまえが大丈夫だと思えるまで、そのままでいい。無理に、開けんなよ。皆が心配しても大丈夫だ。おれが伝えておく」



 ――と言ったのに、



「まあ、おまえらには言わなくとも、いいかと思ってな」


「・・・・・すざく・・おまえってやつは・・・」

 絵師が脱力して坊主の着物を離す。


  ヒョウセツが首をふり、セリが扇子で弟の頭を勢いよくはたき、サモンがなだめる。


 叩かれた頭をかく坊主への文句は、一気に、消えた。

 絵師が知る、スザクという男は、情がなくて、空気がよめなくて、自分勝手で、それでいい、と考えている男だ。


 いや、―― そういう男だったはずだ。



 なんだか嬉しくなって見た男の姉も、扇子を広げ、微笑んで見返す。




「しかし、それなら、いつひらくのだ?」

 サモンが、肝心なことを誰にともなく聞いた。


「シュンカが、大丈夫だと思えたときだろ」

 こたえた坊主に、ヒョウセツが組んでいた片腕を上げる。



   「―― それ、ぼくに考えがあります」


  静かに微笑むような声だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ