遠い
――― 雲裏の章 ―――
「・・・焦ったアシが、かわいそうだなあ・・・」
翌日、泊めてくれた里人に昨夜妖物が出て退治したと言い訳した一行は、一人減った状況で、黒森を目指し続けていた。
シュンカはさすがに元気がなかったが、それでも、大人二人を逆に気遣い、地図を持って先をゆく。
「あん?誰がなんだって?」
昨夜のことなどまるで覚えてなさそうな坊主が横で首をまわしながら聞く。
「いや。先が長そうだなあ~と思って」
あのあと、三人で並んで寝ることになり、スザクはセイテツに眠ったシュンカの背を押して、つけてきたのだ。
――夜泣きしそうだから、面倒みろ。と。
たしかに、苦しそうな顔をしているのは気になっていたので、あやすようにその背中を叩きながら、むこうで背をむけている坊主をながめ、どうしておれに任すかな、と問えば、返されたのは「おれはガキの世話なんざできねえ」だった。
この坊主が、自分の中のシュンカの位置をただしく認められるのは、ずいぶん先のこととなりそうだ ――。と、懐の小瓶に告げて寝た。
「―― 長くはねえだろ。この里からなら、そんな遠くねえぞ」
「黒森への距離じゃないよ・・」
じゃあなんだ、とにらむ坊主を片手で払う。
と、突然何かを思い出したようにシュンカが 振り返り、セイテツのもとへと駆け寄ると、期待のこもるきれいな眼で見上げる。
「そういえばセイテツさま。ゆうべ、スザクさまが刀を出す前、おれのこと呼ばれましたよね?謝っておられましたが、あれは、なんの御用だったのでしょうか?」
顔をかたむける前に。
「・・・・・・」




