霊よび(たまよび)
ゆらゆらと経が綴られ、合間に、音にならないスザクの言霊がのる。
シュンカが抱えたアシの身体が、どんどん重さをなくしてゆき、形が、にじむように歪み、水に溶けるように薄くなっていくと、その顔からは、苦痛が消えてゆく。
「 アシ。大丈夫だよ。スザクさまに任せておけば、平気だから」
ぼんやりとしかなくなったアシの顔が、シュンカをみつめ、そうして、安心したように目をとじると、そのままかすんで ――――消えた。
「 ――、 。おわりだ」
じゃらりと数珠を一振りし、珍しく疲れたように息をついた坊主が、その場にどかりと腰を落とした。
シュンカが手にしたビンがふいに光り、のぞいた中には、なにかがたゆとう。
「・・・これ、アシだ・・」
――けむのような、かすみのような。
首に数珠をかけなおしているスザクへ、シュンカがとびついた。
びくともしない坊主は、礼を言い続けるその背を軽く叩き、―― 微笑んだ。
「・・・ったく。おまえら・・」
セイテツは、おのれも笑っているのに気付く。
坊主も子どもも、なんなくやってのけたこれは、徳をとった坊主にしかできない、『霊呼び』の術だ。
大臣の、ハンゴンに並ぶ、死者を呼び戻す術で、『力』も『気』も最大限につかうので、スザクはこんな術いらねえ、と前々から断言していた。
死にゆくものを、もどす必要などない、とも常々言っている。
それが、 ―――。




