ひきぬく
虫と苦し気な表現つづきます。ご注意を
「アシ?おれが、わかるか?」
身体の上には、坊主。
覗き込んだのは、絵師だった。
こたえる代わりにむせ、また、何かを吐き出す。
いや、吐き出し続けている。
とぎれることもなく、黒く長いものが、口からあふれ、ときおりそれが、ぶるぶると震えるように揺れ、ねじれるのだ。
それをみた坊主が、だめだな、とアシの頭を押さえつけると、さらに顎をつかんで口を開かせた。
我慢しろよと口の中へ突っ込んだ手が、その黒く柔らかいものをつかんで、一気に引き出したが、舌を打って「頭が、まだ中だ」と、経を唄いはじめる。
っぐ、ごぼっ、 っが ごふっ、 があ っごぼ
水っぽい音とアシの苦しむ声が続き、坊主の唄う声に段々と力が入っていく。
「 、っテツ!!」
叫び声にあわせたように引き抜かれたそれが、絵師に投げつけられた。
きいいいぃぃイイイイ
甲高い鳴声が響き、びたびたと地を叩きねじれる『蟲』が、ムカデのような顎を絵師にむけ伸ばす。
その頭が、一瞬で現れた氷塊で潰される。頭をなくし、のたうつからだも凍ってゆくのをみとめた坊主が、刀で砕いた。
細かく飛び散るそれに、すばやく塩をまく絵師を、坊主がにらむ。
「おいテツ、そんなことできるなら、普段からやりやがれ」
いつも、おもしろがるように、氷で挟んで潰すことしかしないくせに、と塩に溶かされる残骸をみやる。
「あいにくと、年寄りだから、腰が重いんだよ」
わざとらしい言葉選びに、坊主はただ、鼻をならすだけにした。




