腹の中
ここからまた別の虫がでます。嫌な描写にご注意ください
なのに、それでも ――。 蟲となった身体は、シュンカを欲し、めがけて飛べば、にらむように見据えてくる絵師が光る手をかざした。
背中の羽が、凍って砕ける。
そのまま落ちたが、痛みなど感じぬはずの身体が、ひどく、痛む。
「あ、アシ!」
まちわびたその声が耳に届き、それを意識したとたん、腹の中の痛みがひどくなる。
「っく!っぐはっ、」
ぜえぜえと、あえぐように、息を吸う。
―― 身体が、そうしろという。
何かが、腹の中で、命じてくる。
「っぐ、ごほっ」
こみあげてくる感覚に咳き込むと、顔を横へとむけられ、とたんに、ごぶり、と口から何かがこぼれだす。
じゃらり ――、冷たく硬い感触が顔をなでた。
「――おう。眼が覚めたかよ」
数珠で顔を撫でるのは、いつもの鋭い眼で見下ろしてくる坊主だ。
じゃらり
撫でられるたび、口から、ぞろり、と、『それ』が出る。
くるしい。
腹が、 いたい。
さきほどまでのは、――夢か?
いや、ちがう。
むこうに、顔色の悪いシュンカがいる。
手を伸ばそうにも、その『手』は、もう、無い。
――腹の中が、まだ、ざわざわと、うごめく。




