そりゃ違う
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シャムショの若い者たちが、突然の行方知れずとなって、まだ、半年も経っていない。
もちろん、誰も口にはしないが、何が起こったのかは、みなが了承している。
シュンカは四の宮からもどってから、ひと月ほど姿を見せなかった。
ひどい目にあった子の、肉体の痛みを取り去ったのは、坊主の次に天宮に戻った弐の大臣だった。
めったにつかわぬ術を使うため、本当は頼りたくもない天上人を頼り、普段作る薬に必要な宮の周りに咲かせる金の蓮を、全て引きかえに薬草をてにいれたヒョウセツは、安いものだと絵師に笑ってみせた。
身体の痛みがひいた後に襲った高熱を冷ましてやったのは、黒森の火事をとめて帰った参の宮の大臣セリだ。
黒鹿から礼にもらったというその黒い角から作った薬を飲ませれば、徐々に熱も下がり、寝息も静かになった。
残ったのは、深い、心の痛み。
初めは、あまりの出来事に、シュンカは声を失ったのかと、みなが思った。
なにもしゃべらず、ただ、ぼうとした顔で、うつらうつら過ごすだけになった。
話しかけられても、こたえず、すぐに布団にくるまってしまう。
顔を出さない。
食事も、ろくにとらない。
生気が失せ、あんなにあふれかえっていた『気』が消えた。
ずうっとベッドの中にいるわりには、眠ってはいないようで、いつ様子をうかがっても、丸まった布団が、もそもそと動いていた。
心の病だな。と、ヒョウセツが悲しげに断を下し、セイテツが唇をかんだ。見舞いに通うセリとサモンも、しかたがないとうなずいた。
「――おい、そりゃ違うぜ」
スザク一人が、同意しなかった。