しずかに
だが、黒森へ行く前に弐の宮へセイテツとともにゆき、もどってきたアシのようすは、なんだかいままでと違っていた。
セイテツも、いつものように抱きついてふざけることもなく、部屋へと戻った。
夕食の片付けもおわったところで、アシを元気づけようと、スザクにいわれたことをシュンカは伝えようと思いついた。
「あのね、アシもいっしょにゆくんだよ。スザクさまは伍の宮みんなっ 」
「黙って。シュンカ」
アシの、静かな命令が、頭へじかに囁かれた。
ぎゅう、と。セイテツによくやられるように、抱きしめられているのだが、―――。
シュンカ と呼ばれてまわされる手は、背中を撫でてそのまま肩まで這ってゆく。
「 あ、 アシ? 」
こちらの名を呼ぶ役神は、頭へ何度もその顔をうずめ、小さくなにやらつぶやき続ける。
肩をつかむ手は、着物を必死に、何度もにぎり、合わせがゆるんで布が肩からはずれる。
「あ、あし」
「静かに」
はだけた肩に、役神の荒い息がかかる。
着物をにぎっていた手が、ゆっくりと移動して、肩の肌をつかんだ。
「っ!アシ?どうしたの?具合が悪いの?」
「っっ ――――!!」
どん!! と、突き放すように役神が離れた。
シュンカはただ驚いて相手をみる。
アシも、負けずに驚いた顔をしてみていたが、シュンカの様子に気付くと、慌てて謝りながら、その着物を直した。
「すまない・・・。なんだか、いきなり ―――」
「平気?なんだか、変だったよ?」
アシはシュンカをそっと、離して、ゆっくりと、距離をとる。
「――大丈夫。ちょっと・・苦しくなったのだけど、きっと、・・ヒョウセツ様の気に当てられたのだと思う。 あの方は、サモン様と違って、むき出しの『気』が多いから」
苦しげに訴える役神に、シュンカはただ、心配そうな眼をむけてきただけだった。
そのあとから、なんとなくおたがい様子をさぐりあうようになった。




