ほんとに捨てる?
――― 陽炎ゆれる 章 ―――
わっ、とつまずきそうになったのを、横からのびたアシの腕で支えられる。
優しく微笑みかけられるのだが、シュンカはなぜか、落ち着かない。
天帝の言葉の意味を、坊主も絵師も、詳しくは教えてくれない。
いや。スザクは、聞けば教えてくれるだろうが、『捨ててこい』といわれたことを伝えたときの、セイテツの、痛そうで悲しそうな顔をみてしまった後には、それもできなかった。
帝の『言葉』は絶対だ。アシを捨ててくるという言葉は、くつがえせない。
それはシュンカも心得ているが、自分にできることはないかとスザクに言ってみた。
いつものごとく、静かな顔と声で、ねえだろ、と返されたが、いつもと違い、頭を、ぽん、と撫でられた。
『蓋』というのをして、力の調整をしてくれるのだと、前にセリに教えてもらった坊主のその動作は、なんだか、とても、《心地》が良い。
黒森にゆく日にちを伝えてきたスザクは、アシも、一緒にゆくのだと言って、「捨てねえよ」とあっさりつけたした。
「化け猫が言ったのは、たとえだ。そう、やすやすとは捨てられねえだろ? 口のきけねえケモノじゃねえんだ。アシには口も手足もあるし、考えることもできる」ただなあ、と続けようとした言葉は、目があったら、うやむやになった。
「―― まあよお、とにかく黒森には、伍の宮全員でゆく」
その宣言が、なんとなく、嬉しかった。
前に、シュンカがひどく落ち込んでいたときも、坊主はそれを、『伍の宮の皆で負う』。と言ってくれた。
もらえるもんはもらう。そうしたら、それを、皆で負えばいいと。




