言っていないこと
シャムショのアキラが、会うたびにアシは『感情』が豊かになりますね、と言ったとき、セイテツは背が冷えた。
それは、『人』に近付いてゆく兆候だ。アキラは親しみをもてるという意味で口にしたのだろうが、そんな兆候、
―― 役神には必要ない。
「―――― スザク。おまえ、・・・おれに言ってないことがあるだろう?」
手をつなぐどころか、ひたりと身をつけた前の二人を見据えたまま、絵師は坊主の答えを待った。
「・・・シュンカがだきつくまで、おめえ、おかしな影、負ってたぜ。―― それと・・、シュンカには、今朝、少しばかり『経』を流し込んでおいた。このところ、朝、会うたびに気の流れがゆがんでやがる。 今朝は、いちばんひどかったんでな」
いつもなら、棍で叩き合う内に消えてなくなるそれが、今朝は、残った。
「・・・そうだったか・・」
セイテツはぼさりと伸びた藁色の頭をかく。
氷をとばしたこちらへ、何も返さなかった坊主が、触りもしなかった、その背に負う、ばかでかい刀をさわりながら、前のふたりを目で追う。
「 ―― 言っとくが、おめえの面倒までは、みれねえからよ」
スザクが、面倒そうに告げる。
「・・・わかってるさ。『氷のセイテツ』をなめんなよ。――年寄りでも、自分の面倒くらいは自分でみる」
妖物退治にむかうときのように、馬鹿にしたよう、にやけてみせた。




