久しい感覚
「本当のことを言われて腹を立てるなんざ、やっぱり年寄りみてえだ」
切れた頬の傷もそのままのスザクが、馬鹿にするでもなく、言う。
こいつの、こういう感情のこもらない言葉が、実はいちばん頭にくる。
「――スザク。これ以上おれを怒らせるな。ガキでも手加減してやるのは一度だけだ」
こまかくうすい氷をいちどきに飛ばし、着物と皮膚の数箇所を切ってやったのだ。
『氷のセイテツ』と呼ばれ慣れたころの感覚を思い起こしていた。
近頃、妖物の退治にも出ていない。
久しくつかう『力』に、身体と頭が、ひどく興奮している。
うっすら血のにじむ傷をさらしたスザクと眼が合えば、このまま続けてしまいそうだった。
「セイテツさま!だめです!」
叫んで首に抱きついてきたそれに、――とたんに、力が抜けた。
いや、違う。
この子の、『気』にふれて、おのれの『気』が、変質してゆくのを、じわり、と味わう。
つづいて、くらり、と足元がぶれる。
年寄りのなんとか、だなと坊主がひやかす。
「・・るせえ。・・・へいきだよ、シュンカ。こんな図体のでかいガキとやりあう気はおれにはないよ」息ができないから少し腕を緩めてくれと、その子どもの頭にささやくが なんだかわからぬが、『 助かった 』と、息をつく。
「なあ、テツよ・・・」
スザクが不機嫌な声をだしたので、シュンカを離すと、すかさず、その子を呼ばわったのは、向こうに立つ役神だった。
「―― おふたりには話し合いが必要のようだから、シュンカ、こっちに、おいで」
シュンカは男ふたりをみくらべたあとアシが手をのばし待つほうへ行った。
鼻にしわを寄せた坊主が眼でさす先に、『わらってる』アシがいる。




