中でざわつく
――― 照りわたる 章 ―――
黒森へ出る日を明日にして、アシはひどく緊張していた。
弐の宮へと呼ばれ、自分の身に起きていることを、そして、―― 存神というものの、なりたちを、ヒョウセツとセイテツから聞かされた。
己のカタチが尽きなくなった理由は、二人とも語らず、こちらも聞かなかった。
ただ、絵師は、淋しそうに笑い、「おれはおまえが好きだよ」といった。
なにかが、
―――身体の中が、ざわついている。
台所で明日の支度をしているときに、シュンカがやってきた。
そっと様子をうかがうように、なかなか入ってこない。
「どうした?」と声をかけると、ようやく、そうっと入り込んできた。
「あ、あのさ、おれ、・・・よく、わかんないんだけど・・・。アシが、何か、具合よくないらしいってことは、わかるよ」
ちらちらと、眼を合わせようとしない。
どうも、シュンカは、アシに起こっていることを、詳しくは聞かされていなようだった。
それでも、なにかを感じているのか、それとも、気を遣っているせいか、こちらに近寄ろうとはしない。
それが、なんだか ―――。
〈 なぜ。 こちらに来ない? そんな、離れて ―― 〉
「 ――おれに、なにか、できること、ある?」
むけられたのは、いつもの、優しく、疑うことを知らぬ、きれいな眼だ。
――― 身体の中に、何かが涌いた。




