尽きない
アラシはぐつぐつと笑うような音をもらし、確かに帝が押し込めたがな、という。
「―― 人を喰えば、ただの妖物と同じ。帝にも理解できるモノだから、あれはただ、いつものように、『そこから出られん』と口にしただけよ」
そうして出られなくなった存神と、それをつくりだした人間が、『宝物』として、いくつかの場所に祀られている。
「 ――ミカドらしい、趣味の悪さだ」
顔色も悪く言葉の出ない絵師の肩を叩き、壱の大臣が代弁する。
黙り込み、いつものように感情のない顔をさらす坊主に、アラシが鼻息をかけた。
「『捨ててこい』、とはな、おまえにどうにかしろといっておるのだろう。どうせ、黒森へ出るのだろう?黒鹿の長は、賢くおもしろい男ぞ。なにかよい知恵を、かしてくれるやもしれん。 ―― のう、セイテツ。 アシはもう、仕立てなおす必要がないのだろうよ?」
「・・・・・」その通りだ。
「テツ、いつからだ?」寝耳に水の坊主が低く問う。
「・・・すまん・・・。ヒョウセツが、話しあいたいというのを伝えた日の夜に、・・カタチが尽きなくなった。いくらやっても・・・人の型のままだった・・・」
あの夜の、寒気がした出来事を思い返す。
アシの中身はいつものように、眠るように、閉じたというのに、その器が、いつまでたっても葦には戻らない。
―――焦り、こわくなり、 悲しくなった。
「セイテツを責めるなスザク。わたしでも、同じように黙っていただろう。ただでさえ、シュンカにはあんな、ひどい事が起こったばかりだ」
サモンのそれに、アラシが、おお、と声をあげた。
「それか。アシは、シュンカを守れなかったと、人のように悔いておるはずだ。それのせいで、『おもい』がよけい強まったのだろう・・・いかんな・・・かなり、重く早く、事が運んでおるようだ。おい、スザク ――」
あいかわらず表情のない男へ、シモベが長い尻尾をのばす。
「――気を、つけるがよい。どこで、アシでなくなるか、わからんでなあ」
音だけのんびりとした言葉の内容に、誰も何もいえなかった。




