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人のように
「・・・しまった・・・」
つい、かつんかつん、と響く音に合わせて、よけいに野菜を切りすぎている。
まったくどうかしていると、口もとがおかしな具合に緩む。
それは、笑っているのだと、シャムショのアキラに教えられた。
おまえは、人のように、心が豊かだなあ、と、眉をよせて笑った男は、この頃、肩を叩いてきたりする。
――前よりも、しゃべる相手の気持ちというものが、理解できる。
それを見透かしたように、ヒョウセツがじっと見つめてくる。
セイテツが、頭をかいて困った笑顔を浮かべる。
スザクは、黙って腕を組む。
自分でも、よくわからない『不安』というものが募ってゆく。
かつ かつ かつ かつ
硬いものが叩き合う音が早まった。
これがやがて止み、少しすれば、慌てた足音がやってくる。