中でそだつもの
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「アシ!遅くなってごめん!」
いつかと同じように、シュンカが汗を拭きながら、台所へ飛び込んできた。
「シュンカ・・・何度も言うが、もう朝飯の支度はやらなくても」
「そういうのはだめだって、スザクさまも言ってたろ?ちゃんと仕事をしたうえでなら、いいって言ってくださったんだから」
「・・まあ、そうだが・・・」
あの坊主の、自分とシュンカの扱いの平等さは、徹底している。
袖をまくった子どもが膳の支度をしだすのを、アシは見守った。
髪もまた伸びた。
顔が変わってきた。
背も伸びてきた。
そしてなにより、シュンカの中に、大きく育ってきているものがある。
「――なのにスザクさまは、こうやって右へ流すんだ。おれじゃあ追いつけないよ」
「もう少し背が伸びれば、腕も伸びるだろう?」
「・・そっかな?うん、早く手加減なしでやってもらえるようにがんばろ」
いそいで飯をほおばる姿は、あいかわらず幼いけれど、その中で育つものは、憧れとは異なるものへと変じつつあるのを、アシは知っている。
「そういえばアシ、リンのお墓にあげる花、また取ってきてくれたんだ?」
台所の隅、水桶につけられたそれらを用意するのは、この頃すっかりアシの仕事になっている。
「畑から取ってきているだけだ。わたしにできるのはそれくらいだしね」
シュンカがひどい目にあったとき、自分はまったく気付けなかったのだ。
それはシャムショの男たちも同じで、アキラなどは、ひどく気落ちしてしまった。
アシは ―――。
アシは、確かに、気付けなかったことは悔いたが、その後で、傷ついて、ずっと部屋にこもっているシュンカの気配を感じられ、正直、
――嬉しかった。




