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おとぎばなし ― 明滅にして 明明 ―  作者: ぽすしち
暁の章

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12/47

中でそだつもの




  ―――――  ※※  ―――――






「アシ!遅くなってごめん!」


 いつかと同じように、シュンカが汗を拭きながら、台所へ飛び込んできた。


「シュンカ・・・何度も言うが、もう朝飯の支度はやらなくても」

「そういうのはだめだって、スザクさまも言ってたろ?ちゃんと仕事をしたうえでなら、いいって言ってくださったんだから」


「・・まあ、そうだが・・・」

 あの坊主の、自分とシュンカの扱いの平等さは、徹底している。



 袖をまくった子どもが膳の支度をしだすのを、アシは見守った。


 髪もまた伸びた。

 顔が変わってきた。

 背も伸びてきた。


 そしてなにより、シュンカの中に、大きく育ってきているものがある。




「――なのにスザクさまは、こうやって右へ流すんだ。おれじゃあ追いつけないよ」

「もう少し背が伸びれば、腕も伸びるだろう?」

「・・そっかな?うん、早く手加減なしでやってもらえるようにがんばろ」


 いそいで飯をほおばる姿は、あいかわらず幼いけれど、その中で育つものは、憧れとは異なるものへと変じつつあるのを、アシは知っている。


「そういえばアシ、リンのお墓にあげる花、また取ってきてくれたんだ?」

 台所の隅、水桶につけられたそれらを用意するのは、この頃すっかりアシの仕事になっている。


「畑から取ってきているだけだ。わたしにできるのはそれくらいだしね」

 シュンカがひどい目にあったとき、自分はまったく気付けなかったのだ。

 それはシャムショの男たちも同じで、アキラなどは、ひどく気落ちしてしまった。

 


 アシは ―――。

 


 アシは、確かに、気付けなかったことは悔いたが、その後で、傷ついて、ずっと部屋にこもっているシュンカの気配を感じられ、正直、

     

    ――嬉しかった。




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