てあわせ
大声で泣く子どもを、必死に何かを埋めるようにかき抱く男は、いつの間にか坊主が部屋にいないことにも、気付けなかった。
そうして二人はそのまま、ひと月ぶりほどの、心地よく深い眠りに落ち、次の日揃って、それはひどい顔で現れて、みなに笑われ、
――シュンカも笑った。
こうして、元に戻ったシュンカに、坊主が思いもよらぬことを言った。
「おまえが、もう少し早く起きれるのなら、おれと朝の手合わせをするか?」
「ほんとですか?」
ただし、仕事の手は抜かぬこと。アシがシュンカの分を補うのは無しだ、とも言われた。
シュンカは、嬉しかったが、自信がなかった。
坊主の強さはよくわかっている。
自分は、父ほど強くはない。
なのに、手合わせ?
戸惑う子どもの頭に、坊主の大きな手が乗せられる。
「――せっかく、親父殿が棍を残してくれたのだ。おれは、棍は得意でないが、基本の型の流れはどうにかこなせる。おまえと、やってみたいのよ」
「――はい!」
その次の朝からだ。
かつ かつ と、堅いものが合わさる音が響くようになったのは。




