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不器用な二人の恋物語4

 婚姻に際して第二王子リストの迎えの船でミストラル国に渡ることになった彼女は、港に来ていた。

 大勢の見送りの国民、貴族たちが詰めかけている。


「クリスティーナ様、幸せになってください!」

「ええ、ありがとう」


 迎えの船の可動橋を渡って、リストがこちらに歩いて来る。

 クリスティーナはカーテシーで挨拶をすると、彼から差し伸べられた手を取って船に向かう。


 ふと振り返ると、今まで育ってきた王宮が見えた。

 そして皆見送りで手を振っている中に、リュディーはいない──


(やっぱり、来てくれないわよね……)


「どうかしましたか、クリスティーナ様」

「いいえ、なんでもありませんわ」


 そう言って手を引く彼についていく。


(さようなら、お父様。お母様。それから、私の初恋の人)


 彼女は新たな旅路に一歩踏み出した。


 その時、彼女の耳に聞き覚えのある声がした。

 

「クリスティーナ様っ!!! 行ってはなりませんっ!!!」

「コルネリア!? それに、レオンハルトまで……」


 見ると、幼馴染のレオンハルトとその妻であるコルネリアが必死に何かを訴えようとしていた。

 引き留められた彼女は、どういうことかわからず足を止めると、急に手を強く惹かれて船に引き込まれる。


「なっ!!!」

「こいっ!! 早くっ!!」


 先程までの温厚な顔つきとは比べ物にならないほどの怒りと焦りの表情を浮かべるリスト。

 彼に引っ張られる形で船に無理矢理引きずり込まれる。


(こわい……!)


 そう思った瞬間、誰かがリストの腕を蹴り飛ばした。

 思わず閉じてしまった目をゆっくり開けると、そこには彼女の愛しい人がいた。


「リュディー……」

「遅くなってしまい、申し訳ございません。クリスティーナ様」


 クリスティーナを守るように背中に庇いながら、敵を次々になぎ倒していく。


「クリスティーナ様、十秒後に陸のほうへ走ってください! 彼らが助けてくれます」

「──っ!」


 彼らというのが、幼馴染とその妻だと理解すると、クリスティーナは心の中で数えた。


(一、二、三……)


 リュディーがその間も襲い掛かる敵を倒し、クリスティーナの退路を確保する。


「今ですっ!」


 クリスティーナは十秒のカウントと同時に彼に背中を押されて走り、レオンハルトとコルネリアのもとに走った。


「コルネリアっ!!」

「クリスティーナ様っ!!」


 抱き留めたコルネリアと、二人を守るようにして戦うレオンハルト。

 リュディーとレオンハルト──

 三年ぶりの共闘は、大事な人を守る戦いとなった。



 クリスティーナはリュディーに付き添われて王宮の自室だった場所に戻っていた。


「まさか、リスト様がミストラル国だけじゃなくうちを侵略しようとしていたやつだったなんて」

「申し訳ございません。クリスティーナ様を危険に晒してしまいまして」

「ううん。大丈夫。助けてくれたもの。レオンハルトも、コルネリアも、それに、あなたも」


 クリスティーナはそっとリュディーに近づき、頬を触った。


「傷……」

「大丈夫です。かすり傷ですから」

「待って。確かこっちに緊急の医療セットがあったはずだか……っ!!!!!」


 クリスティーナの言葉は強く抱きしめられた衝撃で途切れた。


「リュディー!?」

「嫌ですか?」

「え?」


 彼の吐息が耳元に直接あたって刺激する。


「あなたが嫁ぐと知って、怖くなった。あなたを失うのが……」


 普段口数の少ない彼が、饒舌に話す。

 それにどこか焦っているようで、それにぎこちない。


「あなたには俺は相応しくないと思っていました。俺ではあなたを守ることができないかもしれないのではないかと」

「リュディー」

「それでもあなたが俺の頬を触って、俺の傷を心配してくれた時から、ずっとあなたのことを慕っていました」


(頬の傷……あの日のこと……)


「全てを投げ出してでもあなたを手に入れたいと思ってしまった。俺のものにしたいと」


 背中から感じる温かさと鼓動の速さに、クリスティーナは頬を染める。


(リュディーが私を、好き……?)


「俺は、あなたが好きです」

「──っ!!!」



 あの時から、一目見たあの時から聞きたかった言葉が今紡がれている。


(そんなの、ずるい……だって……だって……)


 クリスティーナは振り返ると、彼の首元に自分の腕を回した。


「大好きっ! リュディーっ!! 私もあなたが好き!!」

「クリスティーナ様……」

「私を奪って。どこへでも連れて行って。あなたのものにして」

「もう撤回できませんからね?」


 クリスティーナの唇は、彼の唇でふさがれた──




 その後、国王の許しを得た二人は、正式に婚約することとなった。

 数年後、リュディーは国婿として認められ、二人が導いた国は永く安寧の日々をもたらしたという──

クリスティーナとリュディーのお話はいかがだったでしょうか?

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