最終話 ずっとずっとあなたが好き
王族同士の結婚が破談となり、そしてミストラル国第二王子の不祥事が明るみになったことで世間への衝撃は大きかった。
ミストラル国王からは正式な謝罪がおこなわれ、第二王子の王位継承権の剥奪ならびに、二国からの永久追放が決まった。
一方、その第二王子と結託して暗躍していたローマンも捕縛され、一生獄に繋がれる身となった。
「では、やはりレオンハルト様の呪いはローマンが」
「ああ、第二王子と手を組んでいた黒魔術師に依頼してかけたそうだ」
王宮での仕事を終えてヴァイス邸に戻ったレオンハルトは、出迎えたコルネリアに仔細を伝えていく。
コートを脱いでクローゼットにしまうと、ソファに腰かけて一息つく。
連日後処理で忙しかった彼は、夕日の光でうとうととしてしまう。
そんな彼の隣にぴとりと身体をつけながら座るコルネリアは、何かに気づいたように身体を離してレオンハルトをまじまじと見つめる。
「コルネリア……?」
「あの……もうすぐ、夜ですよね?」
「あ、ああ」
今、夕方なのだからそうではないのか、と自分に改めて問うてみるが、やはりその真理は変わらない。
「僕の顔に何かついてる?」
「レオンハルト様……今日、何の日かご存じですか?」
そう言われて顎に手を当てて考えてみるが、今日が何の日かわからない。
彼女の誕生日でも、自分の誕生日でもない。
ましてや結婚記念日などでもないし、心当たりがない。
しかし、そこまで考えてようやくコルネリアの言っていたことを理解した。
「新月の日……か……」
「はい……ちゃんと戻っているのでしょうか……」
確かにそうだ。
呪いを解いてから初めての新月は今日──
コルネリアはひとときも目を離さないというようにレオンハルトを凝視する。
さすがに居心地が悪くて、よさないかと声をかけるが、彼女はやめる気配がない。
仕方ないか、と言った様子でレオンハルトはコルネリアの腕を掴むと、そのまま抱きしめる。
「──っ!! レオンハルト様っ!!」
「ほら、こうしてればずっと一緒でしょ」
「でも、もし子供の姿になったら……!」
あられもない姿の彼を想像してコルネリアは思わず目をつぶる。
その瞬間、彼女の唇に何かが触れた。
そっと、目を開けると、目の前にはレオンハルトの麗しいシルバーの髪、そしてその奥からサファイアのような瞳に見つめられている。
「──っ!!」
「ほら、もう夜だ。日は落ちたよ」
窓の外に視線をやると、もう日が落ちている空が見えた。
次第にその空は歪んできて、焦点が合わない。
「ほら、泣かないの」
「だって、呪いが……解けて……よかった……」
細く長い指先で頬を伝う涙を拭われると、コルネリアは思いきり彼の胸に飛び込んだ。
「レオンハルト様……よかった……」
「うん、ありがとう。コルネリアのおかげだよ」
「いいえ、私はあなたに救われてばかりです。今も、昔も」
「ふふ、それは僕のほうだよ」
二人は額をこつんと合わせて笑みをこぼすと、目を合わせる。
「コルネリア、一生傍にいて?」
「はい、私はずっと、ずっとあなたの傍であなたを好きでいます」
「ふふ、大好き。僕の可愛い奥さん」
「レオンハルト様、私の全てを受け取ってください」
「ああ、全てを奪わせて。僕に」
そっと囁いたその声への返事は、彼の唇に塞がれて言えなかった──
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『11回目の復讐~呪いの婚姻を受けた私と王太子は、同じ命で繋がっている~』
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悲恋を交えながらも恋人である二人がお互いを思いあって呪いに立ち向かうお話です。




